農地賃貸借、農作業受委託といった多様な生産要素(土地・労働)の取引形態について検討するため、平成18年度は、長野県の集落営農組織の詳細な調査を行った。この研究では、集落営農における参加形態-土地貸借か作業受委託か-の選択問題について、如何なるファクターが選択の決定要因となっているかを検討した。分析の結果から、たとえ農家にとって農作業委託の経済的な取り分が貸付よりも高くても、「いえ」の世代構成が一世代であれば畦畔・水管理労働を確保できないため、農家は貸付を選択する傾向にあることが明らかとなった。また、圃場ごとの収量データを入手し、土地貸借と作業受委託の生産性の相違、集落営農におけるモラルハザードの問題等について分析した。この研究の成果は、「集落営農への参加形態の選択-土地貸借と作業受委託に着目して-」として、2006年10月の日本農業経営学会で報告した。 また、昨年度からの研究の続きとして、愛知県の畑作地帯(露地キャベツ-大産地)を対象に、「畑地の貸借契約-利用権設定かヤミ小作か-と土地改良投資」について調査を行った。調査の結果から、(1)利用権設定かヤミ小作かの選択の決定要因には、貸し手農家と借り手農家の血縁関係、貸し手農家の農業への従事度が影響していること、(2)利用権設定を結んでいると、借り手農家は貸借地への投資を行いやすいこと、(3)仮に利用権設定を結んでいなくとも、貸し手農家に対する信頼によって、貸借地への投資のインセンティブが増すこと、などが明らかとなった。
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