研究概要 |
1.アミロイドーシスを治療しうる手段としてアミロイド線維を認識する分子設計を提唱し、その一つのターゲットとしてβアミロイドを認識しうる分子を設計した。分子設計のコンセプトには、すでにβアミロイドの認識分子として知られているCongo Redをモチーフとした。すなわち、中心ビフェニル骨格(脂溶性部位)と、そこから両端に伸びるカチオン性部位とアニオン性部位である。実際、この設計にしたがって、いくつかの化合物を合成した。引き続き、それらの新規化合物を用いた結合実験を行おうとしているところである。 2.上記研究の基盤には、難治性疾患の治療という目標がある。そこで、もう一つのターゲット疾患としてマラリアを設定し、マラリア治療薬「キニーネ」の合成研究を並行して行った。これにより、分子レベルでのマラリア治療およびメカニズムの解明を目指している。 具体的には、キニーネの短工程かつ効率的な全合成計画を立案した。化合物合成における立体制御は、私たちのグループが報告している触媒的不斉反応(1価銅触媒を用いたビニル化反応[J.Am.Chem.Soc.2005,127,4138.]およびALB触媒を用いたマイケル反応[Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.1997,36,1236.])を要所で用いる計画を立てた。同時にEschenmoser型の環開裂反応[J.Am.Chem.Soc.2006,128,6499.]による多置換ピペリジン骨格の構築を、効率化の鍵としている。現在、マイケル反応による立体制御に成功し、つづく環開裂反応を検討している。
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