本申請研究の主題であるIRF5(Interferon Regulatory Factor 5)のウィルス感染時における機能解明に関する研究を行った。これまでの研究からIRF5が樹状細胞やマクロフアージなどの免疫担当細胞においてIL-6(Interleukin-6)やTNF-α(Tumor Necrosis Factor-α)、IL-12(Interleukin-12)などの炎症性サイトカイン産生に関与していることが知られていたが、免疫担当細胞以外の細胞における機能は不明な点が多かった。 過去の研究においてIRF5が抗ウィルス応答を示すインターフェロンにより強く誘導されることが知られていたことから、IRF5のウィルス感染時における役割を解析した。代表的なウィルスであるHSV-1(Herpes Simplex Virus)やVSV(Vesicular Stomatitis Virus)による感染実験を行ったところ、IRF5遺伝子欠損マウスでは、野生型やMyD88(Myeloid Differentiation Factor88)遺伝子欠損マウスに比べてウィルス感染に対する感受性が増大していることが明らかとなった。この結果は、IRF5に上述の既存のシグナル伝達系以外の経路が存在すること示している。また、IRF5遺伝子欠損マウス由来のマウス胚線維芽細胞では、野生型と比較してウィルス感染時のアポトーシスの抑制とウィルスの著しい増加がみられたことから、IRF5は感染細胞に適切な細胞死を促すことによりウィルス感染の広範化を防ぐ役割があると考えられた。 これらの成果を、11.研究発表の項に記したように米国科学アカデミー紀要Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of Americaに発表した。
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