本年度は、昨年度後半より技術習得を行ってきた蛍光蛋白質を使用したバイオイメージング技術を使用した研究を行った。研究対象としては、高血圧の主要な要因であるペプチドホルモン、アンジオテンシンIIの受容体であるAT1受容体とAT2受容体に着目して研究を開始した。 高血圧に起因する心肥大・心不全等の心疾患や脳卒中、腎障害は全死亡原因の約4割を占めており、大きな社会問題である。中でも、レニン・アンジオテンシン系は、高血圧の主な要因であることが知られている。アンジオテンシンIIは、AT1受容体およびAT2受容体の2つの受容体を介してそのシグナルを伝えることが知られている。AT1受容体を介したシグナル伝達機構に関しては、その下流シグナルにより、高血圧、各種心疾患を誘発することが知られており、分子レベルにおいてそれらの機構が解明されつつある。一方で、AT2受容体を介したシグナル伝達に関しては、AT1受容体の作用と拮抗することが報告されているものの、それ以外の点に関しては不明な点が多い。さらに、近年、AT2受容体は、AT1受容体の作用に相反するだけでなく、むしろ逆にAT1受容体に先立って心肥大の発症に寄与していることがin vivoにおいて報告されており、これらのシグナル伝達系の解明が急務である。そのため、本研究では、AT1受容体とAT2受容体のモーダルシフトによるアンジオテンシンII感受性調節機構を解明することを通して、これまで明らかにされてこなかった両受容体間のクロストークを分子レベルで明らかにすることを目的とした。これまでの研究により、AT1受容体とAT2受容体はアンジオテンシンII刺激依存的に相互作用することが明らかとなった。
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