1、エボラウイルスの膜糖タンパク質を発現するVero細胞の樹立 エボラウイルスはその病原性の高さからBSL-4に分類されており、実際のウイルスを用いた基礎研究に困難がつきまとう。本ウイルスの侵入過程の研究に用いるため、またワクチン開発への応用を目的にGPを発現するVero細胞の樹立を試みた。GPは細胞毒性を持つため、発現量を抑えて細胞へ導入する必要がある。レトロウイルスベクターはその条件を満たすと考え、本実験に用いた。その結果エボラウイルスのGPを発現するVero細胞の作製に成功した。またこの細胞はウイルスの増殖に必須であるG遺伝子を欠くウイルスの増殖を補完したことから、エボラウイルスにおいても同様の結果が期待された。エボラウイルスのGPを発現するVero細胞を樹立したのは本研究が初めてであり、本ウイルスの侵入過程に関する基礎研究やワクチン開発への応用が可能である。 2、マールブルグウイルスのマトリックスタンパク質によるウイルス様粒子形成に重要なアミノ酸配列の同定。マトリックスタンパク質(VP40)を細胞へ発現させると、ひも状のウイルス様粒子(VLP)が培養上清中に放出される。VP40のN末端側にはVLP形成に重要であると考えられているLドメインが存在するが、Lドメインを欠損したVP40変異体はVLPを形成することができる。そこでLドメイン以外にVLP形成に重要なアミノ酸配列の同定を本研究の目的とした。欠損変異体、アラニン置換変異体を用いた解析により、VP40によるVLPの形成には39位のイソロイシン、40位のスレオニン、297位のアスパラギンが重要であることが示唆された。これらのアミノ酸はウイルスの出芽に働く宿主因子との相互作用に関与する可能性が考えられた。
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