研究課題
本研究では、スーパーカミオカンデにおけるデータ収集系の性能向上により、観測可能エネルギー領域を拡大し、高エネルギー領域での宇宙ニュートリノの研究を目指している。平成19年度は前年度に引き続き、そのデータ収集系のフロントエンドであるQBEE(QTC-Based Electronics with Ethernet)ボードの開発とそこでのアナログ処理を担うQTC(時間電荷変換)素子の開発を中心に進めてきた。QTC素子の開発に関しては、さらなる精密測定のために二度の改版を行ったことで、電荷線型性の大幅な向上、クロストークの削減、そして、数々の測定誤差への対策などが施され、遂に完成に至ることができた。そして、平成19年度末より素子の大量生産が開始され、現在はその生産とともに大量の素子の試験が順調に進められている。また、QBEEボードの開発も順調に進行し、平成19年度夏には、実際にスーパーカミオカンデの検出器の一部分を用いて、フロントエンドの電子回路から、データ収集・処理を行う計算機系までの全ての系での試験を行った。さらに、20インチ光電子増倍管の一光電子分布の測定、レーザー光源を用いた時間分解能測定、温度依存性測定、そして、事象発生頻度に対する依存性の測定も行い、QTC素子が多くを担う数々のアナログ性能に問題がないことを示すことができた。QBEEボードに関しても、大量生産の段階に入っており、今年度前半は〜13000チャンネルの較正を行い、その後のシステムのインストールに備えることになる。さらには、インストール後に備えた物理解析の準備も行っており、その中で特に、高エネルギー事象における事象再構成プログラムにおいて、重要な改善を果たすことができた。その改善はとくに、陽子崩壊解析におけるこれまでの問題を解決するものであったため、陽子崩壊の探索に関しても貢献することができた。今後も、事象再構成プログラムなどの改善を進め、新電子回路導入後のニュートリノ観測に備えていく予定である。
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15th IEEE NPSS Real Time Conference 2007, ISBN-1-4244-0867-9
IEEE Nuclear Science Symposium Conference Record 2007, ISBN-1-4244 1
ページ: 127-132