本研究は、地球内核に相当する400GPa・数千Kという超高圧高温条件を実現する装置の開発を行い、内核構成物質の状態を明らかにすることを目的としている。数千Kという高温条件下においては、従来のダイヤモンドアンビルセル装置で発生可能な圧力は200GPa程度に限られてしまう。その主な原因は、アンビルが加熱時に破壊してしまうことである。地球内核に相当する超高圧高温条件を実現するためには、アンビルの温度上昇を極力少なくし、破壊を防ぐことが重要である。今年度は、より低い投入エネルギーでの高温発生を目的とするパルス状レーザーを用いた新しい加熱方式の開発と、より広い試料空間を確保し、試料とアンビル間の断熱性を向上させることを目的とする高強度ガスケットの開発を行い、以下の成果が得られた。新しい加熱方式については、Nd : YAGレーザーのQスイッチに投入するRF信号を適切に制御することで、ピーク幅が数μsec、ピーク出力が連続光の数倍〜十数倍程度という、Qスイッチパルス光と連続光の中間の性質を持った緩和発振パルス光を出力させることが可能になった。この緩和発振パルス光を、連続光では加熱不可能であった試料に照射し、アンビルを破壊することなく加熱を行うことに成功した。高強度ガスケットについては、高硬度金属とc-BN粉末で構成される複合ガスケットを考案し、実用化のための試験を行った。低圧力領域における予備試験では、100GPa超実験で主に用いられるReガスケットと比べ2倍程度の試料空間が期待される結果が得られている。今後、これらの技術に改良を重ねるとともに、地球内核条件の実現を目指した装置開発を引き続き行う。
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