研究概要 |
レトロウイルスは、感染後に宿主によりその発現が転写レベルで抑制されるいわゆるgene silencingという現象がしばしば見られ、HIVやHTLV-1にみられる潜伏感染もこれを反映している。しかし、その分子機構は未だほとんど明らかにされていない。また近年、RNAを介した宿主-寄生体相互作用に関する新たな概念が提唱された。そこで本研究では、U3領域を標的としたsiRNA様分子が、染色体上のU3プロモーター近傍を標的としてウイルスの転写レベルでの発現抑制を誘導している可能性の追求から開始して、ウイルス感染防御におけるRNA干渉系の機能解明を目的とする。 本研究では、マウス白血病ウイルス(MLV)のU3領域の発現制御を例に取り、ここにRdTSが働くか否かを検証する事とした。shRNAによるMLV U3プロモーターへの抑制効果を評価するためのレポータープラスミドを作製し、HeLaS3細胞に導入、GFPをstableに発現する細胞株クローンを単離した。その結果レポーターカセットを1コピーのみ持つクローンを得た。さらにU3上の様々な領域に対するshRNAを12種類設計し、shRNA発現レンチウイルスベクターを構築した。これらを用いてshRNAによる転写抑制について検証した。しかし、12のshRNAのうち顕著に抑制効果を示すものはなく、抑制効果が最大であったshRNAでも抑制の程度は3割程度であった。トランスダクション後43日まで観測したが、抑制効果に経時変化は見られなかった。さらに抑制効果が最大であったshRNAを導入した細胞と非導入細胞においてMLVU3領域に対しH3K9diMe-ChlP assayを行いましたが、差は見られなかった。また、HeLaS3細胞のほかにTIG-3,3Y1細胞といった癌細胞でない細胞においても同様のアッセイを行ったが現時点では抑制効果は見られていない。
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