自然要因と家畜の放牧の影響の相互作用が植生の動態に与える影響を景観スケールで把握した論文(以下、基礎論文)を国際誌に発表した。今年末または来年初めに発表(公刊)される予定となっている。内容としては、これまであまり研究されてこなかった景観域ごとでの植生の放牧に対する応答を、立地特性を地形単位で把握するという景観生態学的な視点で明らかにし、その応答メカニズムの違いが土壌生成的要因によって規定されるという考察を行ったものである。 共同研究者との連携により、基礎論文により得られた結果が生態系モデルによって再現されるかどうかを検証した。生態系モデルの算出結果はおおむねフィールドで得られた結果を再現できており、フィールドで得られた結果の普遍性をある程度高めることができたと考えられた。まだ、基礎論文で得られた結果をリモートセンシング技術により広域に適用する試みを、共同研究者との連携により行った。 基礎論文により類型化された景観域から選んだ代表的な景観域の一つにおいて、植生の回復についての初期的な挙動の結果を報告した論文を国際誌に発表した。こちらについては、今年の夏に発表(公刊)される予定となっている。内容としては、禁牧柵を利用し、異なる放牧強度下におかれる状態からの回復実験により、各状態がもつ回復ポテンシャルを定量化したというものである。短期的な結果ではあるが、植生のresilienceを定量化する際の枠組みを提案することができたと思われる。
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