研究課題
本研究では、放牧地生態系における種多様性および機能的多様性の維持かつ持続的土地利用を可能にする頑健な生態学的基準を提供するため、生態学の理論体系を放牧地管理に結び付け、その上で予測的価値を持った生態学的管理基準を抽出すること、を大きな目的とした。最終年度となる本年度では、まず、放牧傾度に沿った植物群集における種多様性と機能的多様性の関係を明らかにした。緩やかな環境条件下では、種数と機能的多様性の関係はS字型のロジステイック曲線で描かれた。これは、低い種数レベルにおける機能的冗長性から、徐々に種が増えるにつれて急激に機能的多様性が増加し、高い種数レベルでまた機能的多様性が飽和するという二段階の機能的冗長性を表している。逆に厳しい環境条件下では、種数と機能的多様性の関係は正の線形関係となり、機能的冗長性が低いことが示された。得られた二段階の機能的冗長性は、放牧などによる撹乱の結果、群集がある一定の種数を下回ると急激に機能的特性が失われ、限られた機能群しかもたない対照的な状態ヘシフトすることを示唆するものといえる。最後に、実践的な土地管理への応用として、先行研究から得られた生態学的閾値をベースラインとして予測的価値の高い生態学的基準を抽出することを試みた。各生態的特性群および各植物種の閾値近辺の挙動の解析を組み合わせることで、持続的土地管理に直接結びつく生態学的基準を明らかにした。得られた基準を軸として生態系管理論を構築し、独自の先行研究から得られた知見を持続的土地管理の観点から統合した。
すべて 2009 2008 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)
Ecological Applications 19
ページ: 423-432
Ecology (印刷中)
http://homepage3.nifty.com/landscape_ecology/