研究課題
哺乳類の性決定遺伝子Sryは胎仔期の未分化生殖腺内にあるセルトリ前駆細胞で雄特異的に発現し、精巣形成を誘導する。しかし、Sryの発現開始直後に、セルトリ前駆細胞内で何が起きているのかについてはほとんど明らかになっていない。本研究では、Sry発現開始直後のセルトリ前駆細胞においてSry依存的にグリコーゲン蓄積が誘導されること、その誘導はPI3K-AKT経路を介して制御されている可能性をこれまで報告してきた。そこで、平成18年度第一の研究として、SryとPI3K-AKT経路の間に存在するシグナルを同定することを目的とした。阻害剤を用いて検索した結果、Insulin/IGF-I受容体の阻害剤(AG1024)を添加すると、XY生殖腺におけるグリコーゲン蓄積は著しく抑制された。また逆に、XX生殖腺にInsulin/IGF-I受容体の活性化剤(bpV[phen])を添加するとグリコーゲンの蓄積が誘導された。これらの結果から、3型直下でグリコーゲン蓄積を誘導しているシグナル経路はInsulin/IGF-1-PI3K-AKT経路であることが示唆された。また第二の研究として、性分化期生殖腺において雄特異的にグリコーゲンが蓄積する意義を明らかにすることを目的とした。性分化期の生殖腺では、雄特異的に中腎細胞の移入、血管形成などが促され、最終的に精巣索形成を伴うダイナミックな形態形成が引き起こされる。蓄積されたグリコーゲンはこれらの形態変化のいずれかに必要なエネルギー源であるという仮説のもと、グルコース飢餓培養系を用いて、各形態変化のエネルギー要求性を解析した。その結果、グルコース飢餓条件において精細管形成が特異的に阻害されることを見出した。現在、その直接的な原因を分子レベルで解析しており、エネルギー要求性の高いmolecular eventとは何なのかを明らかにしようとしている。
すべて 2006
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細胞工学 Vol.25 No.4
ページ: 369-373
Journal of Cell Science 119・17
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