1.共分散構造分析モデルにおける、尤度比検定統計量の漸近補正の研究を行った。研究代表者の開発した尤度比検定統計量に対するBartlett補正により、既存の方法よりもとくに小標本などの応用上よくある状況下において適切なモデル評価ができることが示された。さらに共分散構造分析で複数の研究者が別個に提案している適合度指標について、これらに対する包括的な補正の有効性が示唆されており、現在さらに研究を進めている。研究成果の一部は『教育心理学研究』誌に発表され、また海外の論文誌への投稿も執筆中である。 2.共分散構造分析の部分モデルである探索的因子分析において、分析の最終段階で不可欠である回転という数学的操作の良さは結果得られる因子負荷量の単純構造の度合い(単純度)によって定義される。単純度を測る指標はこれまでに提案されていたが、これを直接最適化する方法はなく、これまでは別の基準を用いた最適化が行われてきた。研究代表者は射影勾配法を用いて単純度を直接最大化する手法を開発し、昨年度国内外の学会で発表して高い評価を得た。現在この方法についての論文を執筆中である。 3.心理データをはじめ諸分野のデータ解析において近年再び注目を集めている多次元尺度構成法について、ベイズ推定の観点から研究を行った。とくに、計量多次元尺度構成法や確認的多次元尺度構成法がベイズ推定を用いて可能になることを示した。多次元尺度構成法はこれまで長い間最小二乗推定およびその関連手法が主流であったが、計算機能力が急速に工場している現在、推定誤差が正しく評価できるベイズ推定は有用であると考えられる。これらの成果は国内の諸学会で発表され、次年度国際学会で発表して意見を集めた後に論文化をすすめる予定である。
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