1)構造方程式モデリングにおける、尤度比検定統計量および諸適度指標の漸近論的近似の程度を改善する補正の研究を行い、尤度比検定統計量に対するBartlett補正を提案した。シミュレーション研究より、補正をしない(既存の)尤度比検定統計量では小標本などの場合にカイ二乗分布への当てはまりが非常に悪くなり、尤度比検定や適合度指標を用いたモデル評価に問題が生じることがわかった。また、本研究で提案したBartlett補正により、現実によくある状況下(例:小標本、大観測変数数など)において、より適切なモデル評価をできることがシミュレーション研究および実データの解析から示された。心理学研究で通常用いられるデータでは、標本数が決して多くなかったり、一因子あたりの指標変数数が大きいことがしばしばある。このような場合において今回提案された補正を用いることは、適切なモデル選択のために重要である。 (2)構造方程式モデリングの部分モデルである探索的因子分析モデルにおいて、射影勾配法を用いて単純度(=単純構造の指標)を直接最大化する手法を開発し、さらにそのためのソフトウェアを公開した。今日、単純構造は因子分析法を用いて実質科学的知見を得るための標準的な基準となっている。単純度を測る指標はこれまでに提案されていたが、単純度を直接最適化する方法はこれまでになく、別の基準を用いた最適化を余儀なくされていた。今回提案した方法により、因子分析で単純構造を抽出することがより容易になり、心理学の応用研究に貢献できると考えられる。 (3)脳派のノイズ除去問題に対して補正した適合度指標を応用する研究をすすめており、研究会等で報告している。
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