研究課題
本年度の研究目的は、前年度までに達成された直接的触媒的不斉反応を基盤として、タキソールよりも強力な抗ガン活性を有する天然物(+)-Discodermolideの触媒的不斉全合成に取り組むことであった。しかしながら、本合成に必要なアルドール型の反応の開発には困難を極めた。そこで、本研究当初の研究目的であったトリクロロメチルケトンをエステル等価求核剤とする直接的触媒的不斉反応の更なる展開について検討を行ったところ、ルイス塩基の構造をビスフォスフィンオキシドへと変化させることにより、これまでとは逆の高アンチ選択的な直接的触媒的マンニッヒ型反応が進行することが明らかとなった。また、本反応系はアリールオキシド部位の構造を変化させることにより、エナンチオ選択的反応へと展開可能であった。さらに、本研究の過程において、Pyboxやビスフォスフィンオキシドといったルイス塩基が存在しないと反応が進行しないことが明らかとなり、この知見をもとにルイス塩基によるブレンステッド塩基の活性化というこれまでにない新たな概念を確立することができた。また、得られたマンニッヒ体は他の方法では合成困難な多置換アゼチジンカルボン酸誘導体へと変換可能であることも見いだした。一方、本反応の開発過程でフェノール類のイミンへのオルト位選択的直接的触媒的不斉付加反応が進行することを新たに見いだした。本反応は従来等量の金属試薬が必要であったものが触媒量の希土類触媒により進行している点で興味深い。現在本反応の条件最適化、基質一般性などについて検討をおこなっており。結果がまとまり次第速やかに一流雑誌に発表予定である。
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Angewandte Chemie, International Edition 47
ページ: 9125-9129