研究概要 |
コンパクト位相多様体の同相群が,ヒルベルト空間をモデルとする「位相多様体」をなすという予想の周辺の課題に取り組んでいる.今年度はチェコおよびポーランドでのトポロジー国際研究集会に出席し,また後者では研究発表を行い,本格的な研究生活の始まりにふさわしい経験を得ることができた.今年度は,以後の研究の基礎として,同相群の局所可縮性の証明に用いられたEdwards-Kirbyのトリックに関して考察を行った.また,非コンパクトな定義域をもつ連続写像の空間をコンパクト開位相で考えたとき,定義域と値域の大域的な性質が関数空間に「良い」性質をもたらすか,より具体的には「局所的な複雑さ」をもたらさないか,を考察した.更に,写像空間が「良い」性質をもてば,ヒルベルト空間をモデルとする位相多様体をなすことを見出した.この際に用いたテクニックは,値域の空間がもつ局所的な凸構造を利用したものであり,多様体の同相群の研究にも応用されると期待される.ところで,写像空間が「良い」性質をもつための条件を見出す方法は,代数的位相幾何学の障害理論に依っている.値域の空間がグラフ,すなわち1次元、CW複体である場合は,その高次ホモトピー群が消えていることによって,写像空間が「良い」性質をもつための定義域に関する条件を完全に決定することができた.また,これとは別に,定義域が単連結の場合は,値域がどんなCW複体であっても写像空間が「良い」性質をもつための定義域の条件を知ることができた.
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