本年度は、主として昨年度1月に所属機関へ提出された修士論文「童謡歌手の歴史社会学-音響メディアの揺藍期における子ども向け文芸雑誌とレコード」の成果について、各学会・研究会において発表し、学術雑誌への投稿に努めた。学会発表はすべて好評を得たほか、オーディエンスから別の研究会(カルチュラル・スタディーズ・フォーラム、トランスアジア文化研究会、等)からの研究発表等の誘いを受けるなど、研究活動や研究者間交流の拡大も得られた。現在は、学会発表等を通じて得たコメント・批評を成果へと反映すべく論文を執筆中である。このうち、すでに1件の論文掲載が決定しており、そのほか学術雑誌へ投稿準備中のものが2件ある。また別途、音楽史の質的調査に関する成果となる論文が、1件出版された。 上記の成果発表のほか、本年度は特に博士論文へ向けての基礎理論を学ぶことにも力を注いだ。とりわけ、メディア論・メディア史・音楽史研究に関する文献を多数読み込むことで、先行研究の整理および本研究の方法論の確立に努めた。その際.所属機関内のゼミナールばかりでなく、他大学の若手研究者たちによって開催されている研究会(聴覚文化研究会)などに参加し、1相互研鎖を行った。現在では、博士論文の基礎部分(目次・序章)がおおよそ整いつつあり、また、論文において利用予定の資料の調査範囲が固まりつつある。本年度の科学研究費補助金の一部は、資料収集・購入に充てられたが、今後も一貫してこの資料調査は継続されるものである。 加えて、本年度夏期は、文化社会学・文化研究に関する国際会議 Cultural Typhoon2006の実行・運営に、特に尽力した。院生でありながら会議の推進の中心を担ったことで、当該学術分野の研究者たちから広く注目を集め、また研究上の指導も多数受けることができた。冬期は、日本ポピュラー音楽学会第18回大会の実行委員を務め、本学会での報告の他、学会大会実行にも関与した。
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