四月三日から四月二三日まで前年度に引き続きロンドン大学SOAS(オリエント・アフリカ学院)において南アジア家族法および在イギリス南アジア系住民に関する在外研究を行った。同学院のメンスキー教授指導のもとでインドおよびパキスタン現代家族法につき研究したほか、スリランカおよびネパールの家族法文献収集も行った。平成一九年度後期から二〇年度前期の一年間はインドおよびイギリスにおいて在外研究を行う予定であったが家族の体調悪化に伴い在外研究は短期滞在を複数回行う事とした。南アジア家族法研究の成果として雑誌「戸籍時報」九月号に論文「インドにおける代理出産の現状と出生子の法的取扱い」が掲載された。同論文は、前年度に「戸籍時報」に掲載された「バングラデシュ家族法概説」翻訳(A.イスラーム著)とともに雑誌「法律時報」の平成二〇年度学会回顧の国際私法、民法(家族法)およびアジア法の分野において四ヵ所で引用された。この他に「戸籍時報」では「パキスタン家族法概説」翻訳(F.コーカー著)が平成二〇年十二月号から掲載され現在も連載中である。七月一七日にはSOASにおける研究成果を「国際私法を語る会」で「南アジア家族法比較一人的不統一法国における多元的家族法構造」として研究発表し、論文を執筆中である。 十一月二一日から二三日まで台湾の世新大学において開催された「アジア三国会議」に出席した。養子縁組に関する各国家族法に関する紹介がなされ、日本の国際私法上の養子縁組について質疑応答に参加した。アジアの家族法研究会メンバーとして今後シンガポール、インドネシア、ブルネイおよびフィジー法翻訳も担当する予定であるのでこれらの諸国の人際法、国際私法を含めた身分関係法研究準備もはじめた。いずれもイスラーム法、ヒンドゥー教法の影響が強く人際法研究を継続、拡大する上でも重要な位置づけにあると考えられる。
|