研究課題
餌成分の制御が可能な人工餌の開発を行い、餌成分に用いた木材構成成分である炭素源の種類がタカサゴシロアリ共生系に及ぼす影響を評価した。その結果、与えた単一炭素源(セルロース、セロビオース、グルコース、キシラン、キシロース)によりシロアリの生存率が大きく異なり、特にキシランを用いた時に高い生存率が維持されるという新規な現象を捉えた。また、摂食した炭素源の分解に関与する酵素の活性がシロアリ腸内で高くなる事を明らかとした。以上の結果より、タカサゴシロアリが木材に含まれるキシランに対して高い代謝能を有している可能性が示唆されると伴に、タカサゴシロアリ共生系の特性が餌成分に応じて変化する事が示唆された。次に、各種人工餌で飼育したタカサゴシロアリの腸内細菌群集構造を、クローンライブラリ法、T-RFLP法および定量PCR法を用いて解析し、餌成分が腸内細菌叢の群集構造に及ぼす影響を比較した。その結果、摂食した餌成分に応じで、domain Bacteriaに関しては腸内細菌叢の群集構造が門レベルで劇的に変化することが明らかとなった。一方、domain Bacteriaに関しては、キシラン以外の単一炭素源を用いて飼育を行ったシロアリ腸内の古細菌叢の群集構造が木材摂食シロアリ腸内の群集構造と類似していた。このことから、単一炭素源は腸内古細菌叢に大きな影響を及ぼさない事が示され、シロアリと腸内古細菌叢は餌成分の変化に対して変動を受けない、密接な共生関係にあることが示唆された。本研究で得られた知見は、今後、シロアリ腸内細菌叢の機能を活用した木質系バイオマスの新規前処理法の開発に活用される事が期待される。また、昆虫-腸内微生物共生系における未知微生物探索への基盤技術として利用される事も期待できる。
すべて 2007
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 71(in press)
Microbes and Environments (in press)