6b過剰発現形質転換植物体ではオーキシン誘導性遺伝子の発現レベルが低下しており、かつ6bはクロマチン構造に影響を与えうるヒストンシャペロン活性を持つ。オーキシン誘導性遺伝子はARFと呼ばれる転写因子群により制御されていることから、6bはARFによるオーキシン誘導性遺伝子の転写制御にクロマチンレベルで影響を与えると考えられた。 そこで、6b遺伝子の発現をデキサメタゾンで誘導することができる植物体を作成し、デキサメタゾン添加後、オーキシン誘導性遺伝子の発現レベルをリアルタイムPCRにより調べた。その結果、オーキシン誘導性遺伝子の発現レベルはデキサメタゾン添加後6時間で、添加前と比較して約1/2に低下した。さらに、この発現レベルの変化は、他の6bにより発現レベルが変化するClass I knox遺伝子、細胞周期制御遺伝子の発現レベルの変化よりも、早期に起こった。このことは6bによりオーキシシ誘導性遺伝子の発現が直接的に制御されていることを期待させる。 次に、オーキシン誘導性遺伝子、および6bによって発現レベルが大きく変化する遺伝子のプロモーター領域の、ヒストンの化学修飾の状態を、クロマチン免疫沈降法により調べた。その結果、6b過剰発現形質転換植物体と非形質転換植物体との間では、ヒストンの化学修飾(ヒストンH3の4番目と9番目のリジンのメチル化、ヒストンH3のアセチル化)の状態に違いはなかった。6bによりどのようなクロマチン構造の変換が、引き起こされるかはさらなる解析が必要である。
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