研究課題/領域番号 |
07041004
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
青柳 正規 東京大学, 文学部, 教授 (40011340)
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研究分担者 |
宮坂 朋 弘前大学, 人文学部, 助教授 (80271790)
渡辺 道治 九州東海大学, 工学部, 助教授 (70269108)
内田 俊秀 京都造形芸術大学, 芸術学部, 教授 (30132822)
STEINGRABER シュテファン 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (00272451)
鷹野 光行 お茶の水女子大学, 文教育学部, 教授 (20143696)
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キーワード | 発掘調査 / イタリア / ローマ時代 / 別荘遺跡 / 床モザイク / 遺構保存 |
研究概要 |
今年度は、既調査区に隣接して225m^2の範囲を新たに発掘したほか、昨年度の調査未了部分の調査を継続した。 現在までのところ、この別荘は大きく以下の五時期に区分できる。 第1期は、具体的な年代を示す要素は乏しいが、遺構の前後関係から、少なくとも後述の第2期以前である一連の壁体が検出されている。ただし現在までのところその時期に属すると考えられるものは少くない。 第2期は、紀元前1世紀の末から紀元後2世紀の初頭に比定される、幾何学紋様の白黒モザイク床面を有する建物によって構成される。この時期において回廊を中心とする建物の基本的プランは確定する。その規模や、彩色漆喰による壁面装飾、大理石製のオーナメントなどから、この別荘が当時の有力者層によるものであることがうかがえる。 第3期は、4世紀頃に比定される。この時期に別荘は全面的な改修を受ける。中庭と回廊を中心とする基本的レイアウトは踏襲されるが、その周囲の部屋のレイアウトは改められ、内装も多色の大理石を用いたものに改められる。 第4期は、4世紀末から5世紀初頭に比定される。回廊に面した主要な部屋の一つが3つのアプスを有する部屋に改修されているが、その作業は途中で放棄された。ほぼこの時期をもってこの別荘は放棄されたものと考えられる。 第5期は、中世以降の二次的改変をまとめたものである。別荘という居住空間としての意義は既に失われたが、その後も長期にわたり廃墟を利用した様々な人間活動の痕跡が認められる。 また今年度の調査によって、建物の基礎となる地層より、紀元前1世紀を下限とする黒色陶器の破片が採集されたことから、この別荘の創建はそれをさかのぼらないであろうことも明らかになった。 このほか調査に伴って出土した多量の遺物は、現在鋭意整理分析中であり、その成果の一端は、刊行が予定される調査報告書に掲載される。
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