研究課題
申請者らが、共同で、また一部単独で実施した調査の結果、カリブ海地域におけるクレオール化現象について数多くの新たな知見が得られた。そして、カリブ海地域を全体として理解することを可能にする共通性と同地域を構成する小地域ごとの個別性がいくつも明らかになった。その共通性と個別性は、具体的にはそれぞれ以下の2点つづにまとめることができる。「共通性」1.音楽等の芸術面や都市景観において、ヨーロッパの伝統とアフリカなどさまざまな起源を持つ伝統が混じり合いが確認できるが、例えば、一見全くヨーロッパ的とみえるものであっても、ヨーロッパのどこにも同じものがないという、カリブ海地域文化の独自性があり、その価値が決して低くないこと。2.上記の如きクレオール化の積極的側面は明らかであるが、この文化現象に対して無限定の自由が保証されているわけではなく、クレオール化はそれを規制し拘束する条件(例えば、経済的従属、植民地主義など)と連動しながら進展し、形作られてきたこと。「個別性」1.この地域に展開する小さな共和国などの小地域ごとに、その置かれた条件(独立国であること、海外県であること等)に従って、文化の姿が大きく異なること。そしてまた例えば、同じく旧英領の独立国であっても、独自性を強くみせるジャマイカと未だに強い植民地主義のもとにあるバルバドスなど、個別条件が文化に与える影響が大きく異なること。2.文化が地方的なものに留まらず、世界規模で発信されつつある現在、クレオール文化のありかたに、世界市場や先進国文化産業の「動向が非常に強いを与え続けていること。 例えば、絵画や音楽の新たな運動にはその影響が最も明瞭にみてとれること。
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