研究課題/領域番号 |
07041006
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
小川 英文 東京外国語大学, 外国語学部, 助教授 (20214025)
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研究分担者 |
樋泉 岳二 日本学術振興会, 特別研究員
ディソン ユセピオ フィリピン国立博物館, 考古学部門, 首席研究員
ロンキリオ ウイルフレド フィリピン国立博物館, 考古学部門, 部長
小池 裕子 九州大学, 大学院, 教授 (40107462)
青柳 洋治 上智大学, 外国語学部・アジア文化研究所, 教授 所長 (60146800)
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キーワード | ラロ貝塚遺跡群 / 黒色土器文化層 / 赤色土器文化層 / 民族考古学 / 貝塚形成過程復元 / 貝成長線分析 / 生計活動復元 / 古食餌復元 |
研究概要 |
(1)今年度は、4カ所の貝塚発掘、丘陵部の分布調査、地質・花粉分析資料採取、貝採集民・狩猟採集民の民族考古学的調査、現生魚類の種同定と、学術的・総合的な調査を行った。本調査隊・フィリピン国立博物館考古学部門・フィリピン大学大学院生・日本人学生・作業員総勢50名が相互協力体制の下で各調査班に別れてデータを収集した。 (2)カガヤン川西岸の河岸段丘上に立地するカトゥガン、バガッグの発掘によって、両遺跡の貝層中から黒色土器が、貝層下シルト層中から赤色土器の出土が明らかになった。発掘を継続している東岸のサンタマリア遺跡でも貝層下シルト層から赤色土器が出土しており、3遺跡の同時代的存在が示唆される。しかし貝層深度や貝層形成に差異が見られ、3遺跡間の機能の違いが推測された。土器等の分析は現在継続中である。 (3)東岸の後背丘陵地で分布調査を実施し、その結果、新たに3カ所の貝塚と1つの洞穴遺跡を発見した。同時に丘陵部を中心に遊動しながら生活していた狩猟採集民と貝塚を形成しながら定住していた集団間の関係のあり方について、モデル構築のための民族考古学的調査を行った。 (4)地質・花粉分析の専門家の参加によって、貝塚形成過程における古地形の復元が可能となった。すなわち石灰岩台地の風化→干潟の形成→海進等による川の水量増大→シルト質土壌の干潟から砂質川底への変化と河口部での土砂の推積→貝生息開始→貝採集開始→貝塚形成→現在という古地形の変遷と貝塚形成との関係が推測できるようになった。 (5)貝層の形成過程を解明する発掘を継続した。今回、貝成長線分析の結果、貝塚形成優勢種の二枚貝の産卵時期・年間成長率が予測でき、貝採集行動パターンの季節的変異解明の手がかりを得た。また出土した貝・動物骨・植物遺体との比較資料となる現生種標本の種同定を現在継続中である。同時に同位体分析用比較資料も収集し、古食餌復元のための基礎資料を分析中である。
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