研究分担者 |
樋泉 岳二 早稲田大学, 文学部, 講師
ユセビオ ディソン フィリピン国立博物館, 考古学部門, 首席研究員
ウィルフレド ロンキリオ フィリピン国立博物館, 考古学部門, 部長
小池 裕子 九州大学, 大学院, 教授 (40107462)
青柳 洋治 上智大学, 外国語学部・アジア文化研究所・教授, 所長 (60146800)
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研究概要 |
(1)前年度までに行われてきた河岸大規模貝塚の発掘を継続し,編年体系の精緻化をはかった。その結果、赤色スリップ土器群2期、黒色土器群2期に細分し、遺跡ごとの分布変化のパターンを明らかにした。 (2)年代測定,動・植物遺体の種・季節性・生息地の同定と同位体分析,花粉分析を継続して行い,その結果から古環境の利用,生計活動のパターンの時期的変遷を解明する糸口を得ることができた。すなわち貝塚の形成はカガヤン河下流域が沼沢環境から流水環境に変化することによって開始され、その後下流域に貝塚遺跡が増加することが明らかとなった。 (3)河岸遺跡2ヵ所のシルト層中で伸展葬墓を検出し、遺存状態の良好な人骨資料を得ることができた。現在同位体分析と形質的特徴についての分析を行っている。 (4)これまで河岸貝塚から得られた人骨片の同位体分析による古食餌研究の結果、貝塚を形成した人々が意外にも陸褄動食物に依存していたことが解明された。 (3)地質・花粉調査班は河岸、内陸遺跡でボーリング調査を行い、貝塚遺跡の立地条件と熱帯地域では得にくい花粉のボーリングサンプルを得ることができた。 (4)丘陵地帯に立地する洞穴の発掘調査により、剥片石器群、赤色スリップ土器が貝層中から検出された。洞穴の発掘により、異なる環境資源をもつ低地と丘陵間で行われる「交換」の経済的・社会的側面についての基礎資料を得ることができた。今後低地と丘陵間の相互依存関係の変遷をモデル化するための民族考古学的調査を継続する。 生計活動のパターンと人工遺物の編年体系とを結合して,現在までに得られている最も古い年代である3,000年前から1、000年前までの遺跡それぞれ分布パターンを解明した。 (6)3年間の調査結果報告書作製をとおして日比研究者間で活発な意見交換が行われ、今後の調査計画を策定した。
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