南太平洋クック諸島における文化遺産の保存と継承に関する調査研究

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07041022
• 研究機関: 慶応義塾大学
• 研究代表者: 近森 正 慶応義塾大学, 文学部, 教授 (80051390)
• 研究分担者: KAURAKA Kau クック諸島政府文化開発省, 人類学局, 研究員 ; TONY Utanga クック諸島政府海洋資源保護局, 主任研究員 ; 棚橋 訓 慶応義塾大学, 文学部, 助教授 (50217098) ; 吉田 俊爾 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 専任講師 (70081627) ; 森脇 広 鹿児島大学, 法文学部, 教授 (70200459) ; 岡嶋 格 東横学園女子短期大学, 教養系, 教授 (70123073)
• キーワード: ポリネシア文化 / クック諸島 / 石造遺構 / 歴史認識 / 地方発達 / 遺跡の立地景観 / 文化復興 / 文化遺産の継承保存

研究概要

平成8年度の調査はクック諸島ラロトンガ島において集中的に行われた。平成7年度の成果に基づき、(1)ラロトンガ島における考古学的遺跡の立地景観に関する考古学的・人類学的・自然地理学的記録調査、(2)石造遺構(マラエ)の成立時期と文化史的解明、歴史観形成に果たす役割、(3)土地法廷史料に基づく文化遺産継承の民族学的解明、(4)形質人類学的変異の解明等を目的に発掘調査を行った。また、文化遺産の伝承・継承形態に関する基礎調査として、社会組織・信仰形態に関する民族学的調査を行った。その結果、従来不明であったすべての点に亙って充分な資料を得ることができ、クック諸島の歴史的解明と文化遺産の資料整備の両面に亙って一段と進展を見ることができた。
計画されたすべての点に亙って充分に満足すべき以下のような知見が得られた。(1)ラロトンガ島の東部において祭祀遺跡、農耕遺跡、墓葬遺跡など7遺跡の発掘調査を完遂し、ラロトンガ史の復元に貴重な資料を得た。(2)深さ6メートルに達するバーリング調査を実施し、海岸低地の発達に過去の人間の自然改変(焼畑、河谷低地の利用など)が大きく関与している証拠を得ることができた。(3)これらの調査結果を通じて、伝統社会の社会的・政治的単位であるタペレの景観史が解明された。(4)土地法廷資料の収集・分析から文化遺産の継承形態とその変容に関する過程が解明された。(5)墓葬遺跡から人骨標本が発掘され、島民の形質人類学的変異が初めて実証的に解明された。

研究成果

• [文献書誌] CHIKAMORI, MASASHI: "Development of Coral Reefs and Human Settlement : Archaeological Research in the Northern Cook Islands and Rarotonga" Bulletin of the Indo-Pacific Prehistory Association. 15・2. 45-52 (1996)
• [文献書誌] 棚橋訓: "性差について考える" 三色旗. 587. 2-5 (1997)
• [文献書誌] 棚橋訓: "文化の開発,文化の伝統-ポリネシア、クック諸島における文化政策の変遷を巡る-考察" 史学. 66・2. 105-123 (1997)
• [文献書誌] 棚橋訓: "MIRAB社会における文化の在り処-ポリネシア・クック諸島の文化政策と伝統回帰運動" 民族学研究. 61・4. (1997)
• [文献書誌] 棚橋訓: "ポリネシア、クック諸島における土地法廷記録の「読み方」の現在" 土地所有の政治史(「アジア、太平洋地域における民族文化の比較研究」第8回シンポジウム抄録). 24-26 (1996)
• [文献書誌] 劉茂源(編): "ヒト・モノ・コトバの人類学" 慶友社, 664 (1996)
• [文献書誌] 第10回「大学と科学」公開シンポジウム組織委員会(編): "アジア・知の再発見-文化財保存修復と国際協力-" クバプロ, 181 (1996)
• [文献書誌] 塩田光喜(編): "太平洋島嶼諸国のキリスト教" アジア経済研究所, 92 (1996)
• [文献書誌] 秋道智彌(編): "ソロモン諸島の生活誌-文化・歴史・社会" 明石書店, 452 (1996)
• [文献書誌] 松園万亀雄(編): "性と出会う-人類学者の見る聞く語る" 講談社, 285 (1996)
• [文献書誌] 青木保(編): "岩波講座文化人類学第12巻思想化される周辺世界" 岩波書店, 307 (1996)