研究課題
1995年8月2日から31日の約1ヶ月にわたって、モンゴル国首都ウランバートルから西方へ向かって約6000キロをジ-プ3台で走破し、西モンゴル地方の歴史民族学的調査を実施した。その学術的成果は主として次の通りである。まず第一に、これまでロシア語文献など限られた情報でしか知られて来なかった古代遊牧民の遺跡(鹿石、石人等)について現地を捜索して実物を確認するとともに、従来知られていなかった新たな遺跡を幾多も発見し、地図上での正確な位置および遺跡の形状について克明に記録した。第二に、モンゴル国の主流を占めるハルハ族と歴史的に潜在的な対立関係にあるオイラト・モンゴル系の諸集団およびウリヤンハイ族について、聞き取り調査をおこない、その部族アイデンティティの実態を把握した。第三に、オイラト・モンゴル系諸集団のなかで混住しているカザフ、ホトン、ウイグル、トバについて、聞き取り調査をおこない、そのモンゴル化現象および反モンゴル意識の実態を把握した。そのほか、民主化以降の経済的混乱のもとで草原部で遊牧民がどのように生活しているかという実態も充分に把握することができた。以上の点について、今後も継続的に調査を行なったうえで、トルコ・モンゴル系諸集団が歴史的に相互に部分的に入れ替わりながら民族性(エスニシティ)を形成しているという重層性について、調査隊のメンバー各自がそれぞれ論文にまとめる予定である。
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