研究課題/領域番号 |
07041041
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
小山 修三 国立民族学博物館, 第4研究部, 教授 (70111086)
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研究分担者 |
窪田 幸子 広島大学, 総合科学部, 助教授 (80268507)
細川 弘明 佐賀大学, 農学部, 助教授 (70165554)
杉藤 重信 椙山女学園大学, 人間関係学部, 教授 (70206415)
久保 正敏 国立民族学博物館, 第5研究部, 助教授 (20026355)
金田 章裕 京都大学, 文学部, 教授 (60093233)
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キーワード | 土地権 / 伝承 / 神話 / 精神文化 / 観光開発 / 先住民運動 / 文化創造 |
研究概要 |
本研究の目的は、現代アボリジニ社会における知識・情報の分布・継承の様態について、先住民土地権の制度化(1977年、北部準州土地権利法の運用、1994年先住民土地権原法の施行)という状況に応じて新たに生じつつある動向に注意しつつ、民族誌的な記述と分析を試みることである。 本年度も、国立民族学博物館所蔵の木皮画の写真を現地に持ち込み、木皮画に描かれている神話の語りを聞き取る作業を中心に調査を行った。 先住権原法の施行、エコツアー・エスニックツアーなど観光開発や土産芸術品生産へのアボリジニ自身の積極的関与、部族意識と個人意識の乖離、など様々な状況を反映して、神話の個々の語りに変化のきざしが見られ、また地域固有の神話の特徴を融合した神話が創り出されてグローバル化する、といった現象も各地に起こっている。 それと同時に、グローバル化した神話が非アボリジニ社会に流布し、新たなアボリジニのイメージを形成するといった現象が起き始めており、近年普及したインターネットがこれを促進している。自然環境に優しい生活スタイル、精神世界の豊かさ、などのキーワードで代表されるイメージが世界の各先住民に付与され、それに対する西欧社会のファン達がインターネット上で活発な発現を続けており、オーストラリア・アボリジニもその例外ではない。アボリジニ社会の側にも、こうした外部世界が抱くアボリジニ観を観光開発に活用しようとする者、「正しい」神話の伝統が変容することを憂える者、など、様々な反応が現れ始めた。これらアボリジニ側の議論もまた、インターネットを始めとする様々なメディア上で展開されており、コミュニケーションのグローバル化、遠隔地域に住む人々を結んだ新たなコミュニティ意識の芽生え、など、極めて興味深い現象が生じつつある。 このように大きく変化しつつある状況の中で、神話をはじめとする知識体系がどのように継承されていくのかを現在追跡することの重要性は、ますます高まっていると言える。
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