研究課題
中国の経済改革がすでに20年の歴史を持つが、改革の全体像については必ずしも十分に明らかにされていない。最も大きな原因は、研究のための基礎資料が極端に不足していることにある。そこで本研究ではこれまでほとんど研究対象とされなかった内陸部に焦点をあて、経済改革の進展をできる限り多面的側面から分析し評価することに努めた。本年度は調査の最終年度にあたるため、平成10年2月21-22日の2日間にわたってワークショップを開催した。メンバー全員がこれまで2年間にわたる現地調査にもとづいた各自の研究の成果を報告した。その結果にもとづき最終報告書を作成した。報告書は全部で12の章から構成される。その内容は大きく二つの部分に分かれる。第1部は、企業を取り巻く経済的環境に関わる分析である。まず政治(行政)と経済(国有企業)がリンクする制度的問題を取り扱ったのが第2章で、次いで武漢市を中心にした生産物・金融・労働などのマーケットの形成・浸透状況の分析を中心にした第3章から第5章が続く。第2部に相当するのが第6章から第12章までで、そこでは現在の中国経済発展のいわばボトル・ネックになっている国有企業内部における改革の現状それ自体を評価・分析している。生産効率・企業実績、企業間取引・産業組織、投資と資金調達、組織改革、従業員の技能形成や職務意識などの多角的なテーマが分析されている。しかしいくつか残された課題もある。たとえば、累積する国有企業の不良債権の実態とその処理問題、あるいはアジアの通貨危機の中国経済改革への影響などである。これらは今後の課題としたい。
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