研究課題
本調査研究において分析する課題は、(1)EU加盟国の農業生産構造と農業経営の実態の解明、(2)EU加盟国の農地制度と農業経営制度の解明、(3)EU加盟国の条件不利地域対策と環境保全特別地域対策の実態の解明、(4)EU加盟国の農産物域内貿易の動向と産地形成・国際競争力の解明である。これらの課題につき、平成7年度は、イギリス・オランダ・フランス・ベルギー・イタリアを対象に、現地調査を実施し、上記4課題について意見を交換するとともに、貴重な文献と資料を数多く入手した。その結果、次の3点について明らかにすることができた。第1に、わが国における欧州農業の研究は、あまりにもEU共通農業対策の面に偏っており、EU加盟各国の農業生産構造・農業経営構造・農地制度の構造・産地間競争の構造等に関する実態については定かではなかったが、平成7年度に訪問したイギリス・オランダ・フランス・ベルギー・イタリアだけをとってみても、それらについての実態は国情差により相当違ったものであり、それぞれの国ごとに明確にされなければならないことが明らかとなった。第2に、近年、EU農業において現実のものとなっている資源環境保全型の持続可能な農業への取り組みは、今後のわが国農業のあり方を考えるうえで貴重な情報を提供してくれるが、これについても加盟各国間での差異が大きく、平成7年度訪問国に限定しても、それの対応に関しては、社会経済的条件を大きく反映しているものであることが明らかとなった。第3に、「新政策」下で重視されているわが国中山間地域対策は、EUの条件不利地域対策や環境保全特別地域対策を意識して創設された経緯があるが、EU加盟国における農業の多面的機能に配慮したさまざまな施策を検討する過程で、確かに、今後わが国中山間地域対策に有効であることが確認できた。
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