研究課題
平成8年度は、フランス・エジプト・ドイツ・イギリス・ベルギー・フィンランド・オランダ・イタリア・スペインを対象に現地調査を実施し、次の諸点について明らかにすることができた。第1に、フランスでは、近年、社会保障制度の掛金改革が行われた結果、掛金額の負担を少しでも減らそうとして、法主体性をもたない単なる家族農業経営が、家族的EARL(個人所得税下のEARL)に組織替えされたり、あるいは、中堅クラスの家族農業経営(法主体性はない)が新たにGAEC(個人所得税下のGAEC)を創設したりするケースが、目立って増えてきた。第2に、ドイツでは、東西合併により、旧東ドイツ地域の大規模生産農業協同組合(LPGen)は、その多くが登記協同組合(eG)に、また一部は有限会社(GmbH)に、そして若干数が株式会社(AG)に組織替えされることになった。その結果、税金負担との関係で、農業経営を行う場合、どの法律形態が有利であるかが、農業者にとっても関心の的になってきた。第3に、世界のコメを含む穀物在庫が、昨秋、史上最低水準になり、それに伴い国際穀物価格が史上最高水準をつけた。このとき、とくに欧州連合のコメに関しては、エジプトのコメ輸出と輸出政策が欧州連合のコメ需給および貿易政策に大きな影響を及ぼしていることが明らかになってきた。第4に、ライン川河口地域でのデルタプロジェクト、ゾイデル海における大規模干拓プロジェクトは、農業政策・環境保全の面において先駆的な試みであると判断することができた。第5に、近年、EU農業において現実のものとなっている資源環境保全型の特続可能な農業への取り組みは、今後のわが国農業のあり方を考えるうえで貴重な情報を提供してくれることが明らかになった。
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