現在までに、各地の調査から以下のことが判明している。 ジンバブウェの農村部に於いては、日常生活の多くが国家的体制からの影響がほとんどない状態で営まれていることが判明した。一方で国の中央機関としては国家からのさまざまなサ-ヴィスと、国家への義務の存在をアピールしており、これらに挟まれる村人の生活から「国民国家」概念を検討する材料を得た。 タンザニアのニャキュウサ人が現在もっともふつうに踊るダンスは、マラウィ方面から20世紀初めに伝わったものであることが分かった。現在でもこのダンスの本場はマラウィとされており、ダンスティームやダンスの師匠の交流は、タンザニアーマラウィの国境を越えて活発におこなわれている。 南アフリカの国内2ヵ所、ジンバブウェの1ヵ所にンデベレ人は居住しているが、相互の交流はあまり見られない。一方、南アフリカ東南部に居住のズールー人と東北部〜ジンバブウェ南部居住のンデベレ人は、言語的に類似性は高いが、物質文化上では大きな違いがあることがわかった。この差異は、19世紀前半のンデベレ人のズールー王国からの離反以降に生じたものと考えられる。 南ア-ボツワナの国境に近い旧ボプタツワナ(ホームランド)のツワナ人はボツワナにかけても居住するが、経済・情報の面では南アフリカ内のマバトがボツワナを含めた地域の中心地になっていることが分かった。また、彼らのヨハネスブルグへの出稼ぎと出身地との紐帯についての知見を得た。
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