研究課題
本研究は、市場経済体制への移行の目的で導入されてきた価格・貿易政策、財政政策、民営化政策等と農業生産者保護政策が、市場経済への移行期にある東欧の国々の農業部門に対して環境面でどういう影響を与えているのかを検証し、持続可能な農業発展を図るという視点より環境への外部効果を内部化するための制度を考察し、広く移行期にある経済における環境政策面での政府の役割を明確化することを研究目的としている。本年度は、急速に変容を遂げる移行期経済における経済改革と農業分野の環境変化に関係して、ハンガリーを中心に現地調査がおこなわれた。主に生産組織の違いによる土地・水資源の使われ方の相違、肥料・農薬・各種エネルギーの使用方法及び畜産と畑作の有機的関係を含む農業生産技術・経営方法の推移について改革の前後について比較がされ、各種経済改革政策との関係が明らかになった。そしてこれらの推移が農業を取り巻く環境に及ぼしている影響について定性的・定量的に検証がなされた。そこでは、新しい経済環境が窒素肥料使用の低下をもたらし、それが地下水汚染の軽減をもたらしていることが、モデルを使い明示化された。また改革後に導入された環境政策の国レベルと個々の農業経営組織体レベルにおける効果についての分析が継続しておこなわれてきている。これらの分析により明示化された環境への外部効果と現実に存在する経済・環境政策との乖離につき細部にわたり問題検討が行われており、持続可能な農業発展を図るために必要な制度・政策について論文の形にまとめられている。そこでは持続可能な農業発展にする環境に負荷をかけないような農業生産形態を確立するためには、経済的インセンティブを与えるような制度の導入が求められていることが考察されている。さらに分析結果は、国内外で公表されてきており、包括的な考察をおこなうための作業も進んでいる。
すべて その他
すべて 文献書誌 (6件)