本調査研究の目的は、(1)日本の保険料率は、本当に低料なのか、(2)各国間で保険料率に差があるのは、どのような要因が影響しているのか、について検討することであった。 本調査研究の研究期間は2か年であるが、初年度に当たる平成7年度は、保険料率の内外価格差に関する準備的考察として、基本的な文献および統計資料の収集、実態調査等の国内調査を進めるとともに、ヨーロッパ諸国での保険料率に関する実態調査を行なった。具体的には、次の通りである。 1.保険料率は、保険金支払等に充当される純保険料率と、事務経費としての付加保険料率でもって、構成されている。自動車保険と火災保険を例にとって、純保険料率に影響を及ぼす道路交通事情、交通事故、自動車の保有状況、家屋の建築構造・素材、人口密度、都市の過密度等について、ヨーロッパ各国の事情を探った。 2.具体的な調査地点として、ドイツではフランクフルトを、イギリスではロンドンを中心にして、上記について実態調査を行なうとともに、各国の政府統計の収集を行なった。 3.海外調査および国内での予備的な調査を通じて、表定保険料率の国際比較だけでなく、危険度等の各国間の違いを考慮した、実質的な保険料率の国際比較を行なうための準備を行なった。 最終年度に当たる平成8年度は、保険料率の内外価格差に関する実証的考察および、競争や政府規制と保険料率との関連性についての国際比較を進めるとともに、アメリカでの保険料率の実態調査を行なった。具体的には、次の通りである。 1.表定保険料率と危険・事故の発生状況などを考慮した後の実質保険料率との国際比較を行なうために、アメリカ調査を実施した。 2.具体的な調査地点として、ニューヨーク、首都ワシントン、サンフランシスコ、サンタバ-バラを中心にして、上記について実態調査を行なうとともに、アメリカの保険業および、保険規制に関する政府統計・資料の収集も行なった。 3.アメリカでの調査結果を基礎にしながら、保険料率の国際比較の検討を始めた。 4.競争や政府規制と保険料率の関連性についての国際比較を行なった。 5.わが国における保険行政について、政府規制のあり方、規制緩和の推進について、政策的インプリケーションを提示する予定である。 以上、2年度にわたる調査結果により、保険料率においても内外価格差が存在することが確認された。ただし、それは、通常の意味で使われているような、同一製品・サービスに関して、海外における価格に比べて、国内価格が割高であるという意味での「内外価格差」とは、反対の現象であった。具体的には、生命保険を例して挙げれば、次の数字が要約的なデータである。 生命保険の価格:満期保険金(含:配当)1単位当りの保険料 日本 100.0 デンマーク 110.5 フランス 138.5 ドイツ 112.6 ギリシャ 118.9 イタリア 153.8 オランダ 158.0 イギリス 135.0 (日本を100.0とした場合) わが国の生命保険の料率は、諸外国の料率水準に比べて、低料であることが分かる。しかし、各国の資金運用における利回りの差や、平均死亡率の差を考慮しなければ、厳密な意味での、保険の「内外価格差」を検討したことにならない。これらの課題については、現在検討中である。
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