研究課題
国際学術研究
1.1995年度にノルウェー領スピッツベルゲン島ニーオルスンにおいて光学オゾンセンサーをBT-5型高高度気球に搭載し北極域夏季の成層圏オゾンの高度分布観測を行った。放球は4回行われデータのテレメトリー受信はデジタルラジオゾンデを使用してマルチチャンネルのPCMデータ伝送で行われ安定したデータ受信に成功した。今回の放球実験では、上空で気球が満膨張した場合の気球からの太陽反射光が光学センサーに入射してノイズの原因となることを防ぐための改良をセンサーに加えて観測を行った。この放球観測には観測人員2名を現地に派遣し、4回の放球観測は以下のように実施され、いずれの観測も良好なデータが取得された。同乗ECCは光学オゾンセンサーを搭載した気球に電気化学オゾンゾンデを同乗して比較観測を行い、ゴム気球ECCはゴム気球で電気化学オゾンゾンデを同時刻に放球したことを示す。2.1996年3月にスウェーデン・キルナの宇宙物理研究所(IRF)においてFTIR(フーリエ赤外干渉分光計)を用いて、北極域冬季の成層圏大気微量成分の地上観測を行った。この地上観測では観測人員1名を現地に派遣した。観測は、太陽を光源として微量成分の赤外域の分子吸収線のプロファイルの測定をFTIRを用いて高波長分解能で実施した。観測はオゾン化学に関わる分子を対象としてHCl、HF、HNO_3、O_3、CIONO_2、CH_4、およびN_2Oについて行った。3.北極域での成層圏オゾン観測結果についての検討を以下のように行った。但し1996年3月のキルナでの地上観測については本報告記入の段階でまだデータ整理が完了していないのでここでは割愛する。(1)光学オゾンセンサーと電気化学式オゾンゾンデの同時観測結果を比較すると、高度約30km以下ではオゾン高度分布にみられる半値幅約1km程度の構造まで両観測結果はよく一致するが、高度約30km以上では電気化学式オゾンゾンデでは高度が高くなるにつれてオゾン数密度がほぼ単調に減少する一方、光学オゾンセンサーの観測結果には高度約40km付近に明らかなオゾン分布の構造がとらえられている。これは、電気化学式オゾンゾンデはポンプで大気を吸引するために高高度でのポンプ効率の低下により正しい結果が得られなくなるのに対し、光学オゾンセンサーは高度約40km以上の成層圏上部まで観測が可能であることを示している。(2)1995年度を含めて過去2回にわたり、気球搭載の光学オゾンセンサーにより北極域夏季の成層圏上部までのオゾン高度分布が得られた。
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