研究課題/領域番号 |
07041096
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野津 憲治 東京大学, 理学部, 教授 (80101103)
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研究分担者 |
MITROPOULOS ピー アテネ大学, 理学部, 助教授
北 逸郎 秋田大学, 鉱山学部, 助教授 (10143075)
長尾 敬介 岡山大学, 固体地球研究センター, 教授 (40131619)
松田 准一 大阪大学, 理学部, 教授 (80107945)
守屋 以智雄 金沢大学, 文学部, 教授 (50052494)
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研究期間 (年度) |
1995
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キーワード | エ-ゲ火山孤 / ギリシャ共和国 / マグマ揮発性物質 / 火山ガス / 温泉ガス / 温泉 / 島孤火山活動 / 地球化学 / volcano-geomorphology |
研究概要 |
本研究は、大陸プレートであるアフリカプレートの沈み込みに起因するエ-ゲ孤の火山活動の地球化学的な特徴を明らかにし、プレート境界でおきる火山活動を解明することを目的としている。従来このような研究は火山岩の岩石学や地球化学から行なわれてきたが、本研究では火山ガス、噴気、温泉ガス、温泉水溶存成分などマグマ揮発性物質の地球化学的な研究からとりくみ、さらに火山地形学的な視野と総合して新たな展開を図る。 本研究は、平成5〜6年度に実施された「エ-ゲ火山孤の地球化学的調査研究」を発展させた内容であり、現地調査は2年間の研究でさらに詳しく調査すべき地球を重点的に行った。平成7年8月18日から9月13日の期間内に、野津、守屋、松田、北、長尾の5名の日本人研究分担者がギリシヤを訪れ、ギリシヤ側の研究分担者であるMitropoulosと現地調査ならびに試料採取を行った。調査地域は、今回が最初の調査となるマケドニア地方(北部ギリシア)の地熱地帯、追加的な調査を行いニシロス島、サントリ-ニ島を選定した。マケドニア地方は、エ-ゲ火山孤の最も背孤側に位置しており、平成6年度に火山フロントに直交する方向でイカリア島、レスボス島の調査を行い、プレートの沈み込みに伴うマグマ生成の変化を調べることを試みたが、さらに沈み込むブレートまでの深さが場所での地下深部からのマグマ揮発性物質を調査した。調査内容は、(1)温泉の湧出調査、(2)地熱調査などで、温泉ガス、温泉水、周辺地域の河川水の採取を行い、分析用に日本へもち帰った。この地域は、アフリカプレートの沈み込みの影響があらわれない可能性もあり、その場合、地熱地帯の熱源の問題を明らかにしなければならないが、地下深部ガスの同位体分析から、プレート沈み込みに由来するマグマが、火山フロントからどの程度まで遠去かった場所で生成するかを知ることができるであろう。 すでに調査を行い、本年度も調査を行ったニシロス島とサントリ-ニ島は、火山フロント沿いの火山島であり、エ-ゲ火山孤で火山ガスが採取できる数少ない火山である。平成5年度の調査でニシロス島で採取した火山ガスの希ガス同位体比の結果からは、ヘリウム同位体比がマグマ起源を示すと同時に、ネオン同位体比にわずかな異常が見つかった。ネオン同位体比は、火山岩の源物質がマントルのどこから来たかを知るよいパラメータであり、これまでの研究から、上部マントルと下部マントルのちがいが指適されている。島孤火山に由来するマグマ揮発性物質の場合、大気成分の混入によってネオン同位体比の異常が見えなくなってしまうが、ニシロス火山の場合、火山ガスに大気成分が著しく少ない特殊な性質があり、島孤におけるネオン同位体比異常は世界的にも2例目になると期待できる。そこで、本年度はニシロス火山の異なる火口から火山ガス試料を多数サンプリングし、ネオン異常ができるだけ大きく現れる試料が分析できるように心掛けた。採取試料は結果の重要性を考慮して、現在、国内の2ヶ所の研究期間で分析を行っている。 平成5年度からの調査で採取した試料の分析も進んでおり、火山ガスや温泉ガスの(N_2/Ar)比と(He/Ar)比とからは、日本の島孤とは異なるシステマティックスを形成しており、海洋プレートが沈む島孤と大陸プレートが沈み込む島孤とではマグマ揮発性物質の存在度比に差があることが明らかになった。このことは、沈み込むプレートに由来する成分が、島孤マグマの生成に大きく関わっていることを示している。また、火山フロント上の火山の火山岩についてK-Ar法で精密に年代測定を行ったところ、同じフロント上の火山でも活動時期が少しずつ異なっていることが明らかになり、島孤テクトニクスと結びつけた検討を行っている。 平成7年9月19日から10月3日にかけて、ギリシャ側研究分担者のMitropoulosと招へいし、これまでの研究結果の検討を行い、共同論文の作成を始めた。この時期は、本年度採取した試料の分析を行っている時期とも符合していたので、訪問先の研究室で共同分析も行った。分析結果は、すべての予定された項目について出揃っておらず、早急に終了させ、エ-ゲ火山孤のマグマの成因について、マグマ揮発性物質からのモデルを提唱する予定である。
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