研究課題
北アメリカに産する日本と共通するマメ科植物(ホドイモ属、ヌスビトハギ属、ハギ属、ヤブマメ属、フジ属、ソラマメ属)を収集・解析するために、9月29日〜11月14日に、アメリカ合衆国東部および中部で現地調査を行った。現地調査では、目的とする種の押し葉標本および液浸標本を約2000点、葉緑体DNA解析用試料を約60点収集した。押し葉標本および液浸標本は、現在、東北大学、琉球大学および千葉県立中央博物館で分類学的および形態学的研究を進めている。また、東北大学では葉緑体DNA上の遺伝子trnLとtrnF間のnon-coding領域の塩基配列をハギ属について解析している。ホドイモ属は北アメリカには2種のみが分布しているが、このうちの1種は希産種であり、その実態が不明であった。本年度の調査によりこの種の試料が収集でき、2種の比較が可能となり、両種は根系の伸長および分枝様式が全く異なることが明らかになった。さらに、希産種の方は、アジア産種のより原始的と考えられる種と類似した根系をもつことが判明した。ソラマメ属および近縁属については花柱の形態に多様性が見つかり、他の形質と組み合わせて分岐分析を行い、系統関係を推定した。ハギ属と近縁属およびヌスビトハギ属では、花序に特有の腺毛が見つかり、その有無が種間の分類形質として有効であることが明らかになった。さらに、ハギ属における葉緑体DNAの塩基配列を解析した結果、ハギ属はアジアの種と北アメリカの種の各々からなる2つの単系統群からなることが分かってきた。この結果は、これまでのrbcL遺伝子のデータおよび形態学的データと一致した。
すべて その他
すべて 文献書誌 (2件)