研究課題/領域番号 |
07041124
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
伊澤 紘生 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (70072676)
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研究分担者 |
BARBOSA Cesa 環境省, 国立公園局, 専任研究員
MEJIA Carlos ロス, アンデス大学・理学部, 教授
竹原 明秀 岩手大学, 人文社会科学部, 助教授 (40216932)
小林 幹夫 宇都宮大学, 農学部, 教授 (80111392)
西邨 顕達 同志社大学, 工学部, 教授 (00027492)
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研究期間 (年度) |
1995 – 1996
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キーワード | 父系社会 / ウ-リ-モンキー / クモザル / 母系社会 / 森林構造 / 種子散布 / 一斉開花・枯死 |
研究概要 |
1.父系社会の維持機構に関する研究 1)1986年に設営したマカレナ調査地には、7種の新世界ザルが同所的に生息する。うち大型2種、ウ-リ-モンキーとクモザルが父系の社会構造をもつ。本年度は、前年度に引き続きウ-リ-モンキーの長期継続調査中の一群と新たに追加した隣接一群とを、ハビチュエーションと個体識別法を用いて調査した。そして移動様式や採食樹利用のあり方、休息時の個体の空間配置等を中心に社会関係の詳細を調べた。同じく父系の社会構造をもつクモザルについても、一群を対象に、ハビチュエーションと個体識別法によって調査を行った。その結果オトナ・オス間の親和的関係(連合)と敵対関係のありようが、母系の社会構造をもつ他種と著しく異なり、それが父系社会を特徴づける社会関係の一つである点が明確になった。また若いメスが群れを離脱するに至るまでの他個体、特にオトナ・オスとの関係の変化が調べられ、同時に若いメスが新たに群れに加わる際の群れの個体との社会交渉も具体例を収集することができた。 2)一方で、長期継続調査中の母系の社会構造ともつホエザルとオマキザルの各一群についての調査も実施された。とくに父系の社会構造をもつ2種との比較のため、移動様式や採食樹利用のあり方、休息時の個体の空間配置等を中心に、社会関係の詳細なデータを収集した。また母系の社会ではオスが群れを移出入するが、若いオスが群れを離脱するまでの他個体との関係の変化や、群れに新たに加入したオスと個体との社会交渉のあり方についても、父系社会をもつ2種との比較が可能な具体例を収集した。 2.父系社会の適応的意味に関する研究 1)主たる調査対象であるウ-リ-モンキーとクモザルの社会関係を終日追尾調査する一方で、両種のサルが何を食べているかの食物リストと、食物に対していかなる選択性をもつかが調査された。その結果、両種で食性上に大きな違いのあることが明らかになり、それが遊導域内の植生や樹種ごとの分布様式、微地形や微気象とどう関係しているかが併せ調査された。またクモザルが、調査地の主要なヤシ科5種の果実にきわめて依存した食性をしていることが明らかになったことから、それらヤシ科5種について、木の一本一本をマークしてフェノロジーに関する調査も実施した。 2)ウ-リ-モンキーとクモザルは基本的に果実食者であり、両種はその種子を丸のみにする。したがって両種が植物の種子散布に深く関わっていることは明らかで、その実態に関する調査を行った。その結果と調査地の植物相との関係についても調査した。また両種のサルと比較するため、同じく果実食者である地上性鳥類のホウカンチョウについて種子散布の調査を行った。 3.サルの生息環境である熱帯雨林の構造と動態に関する研究 1)継続調査されている調査地内5ケ所に設置した大方形区について、再度の毎木調査が実施され、森林構造が急には変化しない実態を明らかにすることができた。また、熱帯雨林に珍しく、調査地には3種類(ヤシ科ベッセニア属、タケ亜科グアドゥア属、サトイモ科フェナコスペルマム)の単一樹種優勢林(パッチ)が存在するので、一種につき一カ所のパッチに方形区を設置し、毎木調査を実施した。 2)このようなキャノピ-を形成する樹木の調査と併行して、林床植物にも着目して、動態の調査を実施した。調査地では林床植物のうちタケ亜科のササ類が優勢類なので、まず全種類のササ類の同定を行い、それぞれの種について分布様式を明らかにした。また、これらササ類のうち一種が周期的に一斉開花・枯死する事実が突きとめられ、その現象が森林構造とどう関係するか、それがサル類を含む調査地の動物相とどう関係するかが調査され、一斉開花・枯死の生態学的意味を問う手掛かりを得た。
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