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1996 年度 研究成果報告書概要

東南アジアの伝統的水田管理技術に見られる持続性及び合理性の解明

研究課題

研究課題/領域番号 07041134
研究種目

国際学術研究

配分区分補助金
応募区分学術調査
研究機関名古屋大学

研究代表者

木村 真人  名古屋大学, 農学部, 教授 (20092190)

研究分担者 SUWARDHI Sam  Gadjah Mada大学, 農学部, 講師
渡辺 彰  名古屋大学, 農学部, 助手 (50231098)
太田 弘一  愛知教育大学, 技術科, 助教授 (20211790)
鈴木 邦雄  横浜国立大学, 経営学部, 教授 (30018048)
安藤 豊  山形大学, 農学部, 教授 (90005661)
名取 史織  和洋女子大学, 文家政学部, 教授 (30118715)
桑原 連  東京農業大学, 生物産業学部, 教授 (80011899)
SUWANDHI Sambudhi S  Faculty of Agriculture, Gadjah Mada University Lecturer
研究期間 (年度) 1995 – 1996
キーワード水田生態系 / 水田養魚 / インドネシア / 持続的農業 / 伝統農業 / 窒素循環 / 雑草管理 / バイオマス / sustainable agriculture
研究概要

伝統的水田農業における主要な有機物と窒素のプールとフロー、および農家の収入・支出の状況を明らかにするために、インドネシアジャワ島ジョグジャカルタ近郊の2ヶ所の農村を試験サイトとして研究を実施した。Jatisarono村では半数の農家が伝統的な水田養魚(Mina padi)を行っており、残りは通常の稲作栽培に従事している。他方Menayu村では90%以上の農家が水田養魚を主とする経営を行っており、収入の大半が養魚から得られている。後者の農村は前者に比べて収入も多く、伝統的農業の将来像を示唆するものと判断し、両村の比較を通して伝統的水田管理技術に見られる持続性・合理性の実態を解明することを計画した。
その研究内容は、アンケート調査と圃場試験からなっており、両村の水田養魚を行っている農家、Jatisarono村の水田養魚を行っていない農家の3者の間で、農家圃場と裏庭に存在する各種有機物・窒素プールの種類とその大きさ、各プール間のこれら物質のフローの大きさ・多様さを比較し、伝統的水田管理技術に見られる持続性・合理性の実態を解明すること、さらに3者間での農業経営に伴う収入・支出を比較し、農家経営的視点からも伝統的水田管理技術を評価しようとするものであった。
昨年度・今年度の結果から、インドネシアの水田農業においては、有機物・窒素の主要なプールとして、水田圃場に生育する水稲・水田雑草・畦畔雑草に加えて、裏庭(Home Garden)に生育する野菜・果樹、飼養されている家畜等が挙げられること、水稲由来のワラとモミ、水田・畦畔雑草が毎日の家畜の餌として裏庭に持ち込まれ、他方家畜の糞尿は厩肥として水田圃場に還元されていることが明らかとなった。このように、ジョグジャカルタ地域の水田農業では、農村を単位として有機物・窒素循環のプールが多彩であるとともに、各プールの有効利用を通して様々の有機物・窒素のフローが確立されていた。
しかし、Menayu村においても水田圃場で飼養された魚の有機物・窒素のプールとしての意義は他の主要なプールに比較して極めて小さく、Jatisarono村における水田養魚を行っている農家とそうでない農家間での有機物・窒素循環は類似したものであった。また、^<15>N硫安を使用した施肥窒素の動態解析、土壌窒素の無機化量評価からも、両農家間で有為な差異が認められず、水田養魚の土壌肥沃度維持への寄与は明らかではなかった。
ついで、各農家の収入と支出の状況をアンケート調査から比較したところ、インドネシア農家の特徴として、
1)水稲に加えて、乾期に栽培された畑作物(主に大豆)、裏庭で栽培された各種の野菜・果樹、家畜が農家収入に寄与していること、同時にこれら農産物のかなりの部分を自家消費に回し、結果として支出の削減が計られていること、
2)Menayu村では収入の70%近くを水田養魚から得ており水稲栽培から得られる収入は全収入の約25%であり、Jatisarono村に比べて高い収入を得ていること、
3)Jatisarono村では主たる農業所得を水稲栽培に依存(全農業収入の60%)し、水田養魚による所得は全農業所得の10%と少ないこと、Jatisarono村では市場へ出荷する量以上の量の魚を自家消費に回していること、
4)水田養魚を行っている農家の水稲収量はそうでない農家の収量より低いこと、
が判明した。
以上の結果より、ジョグジャカルタ近郊の農業はそれ自体有機物・窒素循環の視点からは極めて多様なプールとフローを維持している伝統的で持続的な農業であり、農耕地で生産されるあらゆる光合成産物(一次生産物)を有効に利用した農業を実施していること、その際水田圃場と農家の裏庭との間で極めて太いフローのパイプを、家畜の飼料としての稲ワラ・モミ殻・水田雑草(水田圃場から裏庭)と厩肥(裏庭から水田圃場)を通して確立していることが判明した。
しかし、インドネシアの伝統的農業に1つである水田養魚の「持続的農業」としての意義を評価したところ、水田養魚による土壌の肥沃性増進への寄与は予想に反して僅かであり、その主たる意義は所得の増大を通した農家経済の安定への寄与にあると結論された。

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公開日: 1999-03-09  

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