チンパンジーの資源利用パターンと社会構造

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07041138
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 西田 利貞 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (40011647)
• 研究分担者: ワモバラ ジェームス タンザニア国立公園公社, マハレ国立公園・パーク, エコロジスト ; 高崎 浩幸 岡山理科大学, 理学部, 講師 (70222081) ; 佐々木 均 酪農学園大学, 北海道文理科・短期大学, 助教授 (60105252) ; 上原 重男 札幌大学, 法学部, 教授 (20145965) ; 川中 健二 岡山理科大学, 理学部, 教授 (70020790)
• キーワード: チンパンジー / マハレ山塊国立公園 / フェノロジー / ライン・トランセクト法 / 生息密度 / センサス / 社会関係 / グル-ミング

研究概要

マハレ山塊国立公園のチンパンジーの行動域内で、1994年に始めたライン・トランセクト法による植生とフェノロジー調査(ランダム・サンプル)を継続した。また彼らがよく利用する低地林内の観察路に沿った5.7kmの別のトランセクトで、比較のために同様な調査を行った。両側5m以内の胸高直径10cm以上の樹木は30科71属81種と不明種6種で計2286本、直径5cm以上の蔓植物は11科14属15種と不明種2種で計707本であった。チンパンジーの食物は、個体数のより多い樹種や蔓植物で、とくに果実を食べる種は個体数が多かった。主要な食物種の空間的分布には、比較的均一な分布や集中分布、低密度で分散的なパッチ状分布、これらの中間的な分布などの違いが認められた。哺乳類資源調査として、既設の観察路のうち25kmを利用してセンサスを行い、16種を直接観察した。とくに4種の霊長類と3種の偶蹄類については、群れの分布や個体数を記録し、植生類型別(forest vs.woodland)の生息密度を評価した。これら7種はすべてチンパンジーに補食されており、とくに2種は重要な被食種である。チンパンジーからも吸血していると思われる双翅目昆虫を2種類のトラップで約200点採集し、酵素抗体法とDNA分析で、採取した血液の種の同定を試みた。またマハレの昆虫相リストを作るための採集を継続し、約300点の標本を集めた。1995年にMグループのチンパンジーで第一位の雄が交代した。前後して多くのおとな雄も消失し、新しい世代が高順位となった。世代交替後の雄間の社会関係を明らかにするために9頭を選び、彼らの行動と他個体との社会的相互交渉や空間的布置関係を、個体追跡法で記録した。またさまざまな年齢層の雄と雌を観察対象に、個体追跡法で他個体とのグル-ミングを記録した。個体の組合せによる頻度やパターン、グル-ミングする身体の部位等について性差や年齢差を明らかにし、この行動の意義を検討した。

研究成果

• [文献書誌] T.Nishida & K.Hosaka: "Coalition strategies among adult male chimpanzees of the Mahale Mountains,Tanzania" In:Great Ape Societies,W.C.McGrew,L.F.Marchant & T.Nishida(eds.),Cambridge Univ.Press,Cambridge. 114-134 (1996)
• [文献書誌] T.Nishida & L.A.Turner: "Food transfer between mother and infant chimpanzees of the Mahale Mountains National Park,Tanzania" International Journal of Primatology. 17(6). 947-968 (1996)
• [文献書誌] T.Nishida: "Sexual behavior of adult male chimpanzees of the Mahale Mountains" Primates. (in review).
• [文献書誌] K.Kawanaka: "Observation time and sampling intervals for measuring behavior and interactions of chimpanzees in the wild" Primates. 37(2). 185-196 (1996)
• [文献書誌] S.Uehara: "Predation on mammals by the chimpanzee(Pan troglodytes):a review" Primates. 38(2)(in press). (1997)
• [文献書誌] M.A.Huffman,J.E.Page,M.V.K.Sukhdeo,S.Gotoh,M.S.Kalunde,T.Chandrasiri & G.H.N.Towers: "Leaf-swallowing by chimpanzees:a behavioral adaptation for the control of strongyle nematode infections" International Journal of Primatology. 17(4). 475-504 (1996)
• [文献書誌] M.A.Huffman,L.A.Turner,M.Hamai,S.Gotoh & K.Yoshida: "Annual and seasonal variation in the occurrence of intestinal parasites in chimpanzees(Pan troglodytes schweinfurthii)of the Mahale Mountains National Park,Tanzania" Primates. 38(in press). (1997)
• [文献書誌] A.Matsumoto-Oda: "First record of a twin birth in chimpanzees of the Mahale Mountains National Park,Tanzania" African Study Monographs. 16. 159-164 (1995)
• [文献書誌] A.Matsumoto-Oda: "Self-suckling behavior by a wild chimpanzee" Folia Primatologica. (in press).
• [文献書誌] A.Matsumoto-Oda,K.Hosaka,M.A.Huffman & K.Kawanaka: "Factors affecting party size in chimpanzees of the Mahale Mountains" International Journal of Primatology. (in review).
• [文献書誌] A.Matsumoto-Oda & R.Oda: "Changes in the activity budget during the female chimpanzees sexual cycle" Animal Behaviour. (in review).