研究分担者 |
揚 壱壱 中国科学院動物研究所, 助手
呉 燕如 中国科学院動物研究所, 教授
山岸 健三 名城大学, 農学部, 講師 (30174600)
幾留 秀一 鹿児島女子短期大学, 教授 (30132525)
WU Yan-ru Institute of Zoology, Academia Sinica, China, Professor
YANG Long-long Institute of Zoology, Academia Sinica, China, Assistant Professor
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研究概要 |
本学術調査の第一の目的は、農業上有用な花粉媒介性野生花蜂類及び天敵として応用上有用な寄生性小蜂類のハチ目昆虫について、東アジアでの系統分類学、生物地理学的研究を行うことにあった。また、これら蜂類の探索発見及び将来の東アジアでの広域利用のネットワーク基盤の形成をも目的とした。さらに、本野外調査で得られた材料や、九州大学昆虫学教室、中国科学院動物研究所所蔵の標本のほか、世界の主要博物館に保存されている東アジア産の当該研究目的の蜂類を借用し、旧北区レベルでの比較研究を行うことであった。この目的に沿って、平成7年度に1回の野外調査(浙江省、安徽省)と1回の標本調査(中国科学院動物研究所)、平成8年度に2回の野外調査(甘粛省2回、浙江省、青梅省各1回)と1回の標本調査(中国科学院動物研究所)を実施した。また、大英自然史博物館、ドイツベルリン動物学研究所、ロシア科学院動物学研究所、スミソニアン自然史博物館ほか世界の主要博物館からタイプ標本等を借用し、研究を行った。 野生花蜂類については計3回の野外調査で約5,000個体の標本が得られ、寄生性小蜂類については、計2回の野外調査で10上科34科9,653個体が得られた。これらについては群集生態学的観点から種多様性の解析を行ない、論文をまとめる予定である。また個々の研究対象になっているヒメハナバチ科ヒメハナバチ属、ムカシハナバチ科チビムカシハナバチ属の2属については系統分類学的、生物地理学的研究を実施した。すでに論文が印刷、または研究の終了した群及び材料は、下記の10件で、学会誌等に印刷発表または投稿中であり、多数の新種、中国未記録種、新同物異名を発見し記載記録した。 1.ヤマトヒメハナバチ亜属:ヒメハナバチ科ヒメハナバチ属に含まれる本亜属について、東アジアから10種を認め、中国から3新種を発見記載し、旧北区産の全種を含む検索表を付した。1新同物異名を明らかにした。 2.ウツギヒメハナバチ亜属:ヒメハナバチ科ヒメハナバチ属に含まれる本亜属について、東アジアから5種を認め、中国から3新種を発見記載し、東アジア産の全種を含む検索表を付した。 3.ヒロヅキバナヒメハナバチ亜属:ヒメハナバチ科ヒメハナバチ属に含まれる本亜属について、東アジアから5種を認め、モンゴルから1新種を発見記載し、旧北区産の全種を含む検索表を付した。 4.トゲホオヒメハナバチ亜属:ヒメハナバチ科ヒメハナバチ属に含まれる本亜属について、東アジアから12種を認め、中国から3新種を発見記載し、旧北区産の全種を含む検索表を付した。3新同物異名を明らかにした。 5.ベルリン動物学研究所所蔵の東アジア産ヒメハナバチ属:フンボルト大学附属動物学研究所所蔵の東アジア産ヒメハナバチ属のタイプ標本5種を借用し、亜属の決定と最記載を行った。学名の混乱していた1種について新同物異名を示し、学名を確定させ、他の1種についても新同物異名を明らかにした。 6.ロシア科学院動物学研究所所蔵の東アジア産ヒメハナバチ属:サンクトペテルスブルグロシア科学院動物学研究所所蔵の東アジア産ヒメハナバチ属のタイプ標本6種を借用し、亜属の決定と再記載を行った。日本産の1種について新同物異名を明らかにした。 7.ドイツ昆虫学研究所所蔵の東アジア産ヒメハナバチ属:ドイツ昆虫学研究所所蔵の東アジア産ヒメハナバチ属のタイプ標本8種を借用し、亜属の決定と再記載を行った。3種について新同物異名を明らかにした。 8.中国での本野外調査で得られたチビムカシヒメハナバチ属:中国での野外調査で得られたムカシハナバチ科チビムカシヒメハナバチ属の系統分類学的研究を行い、12種を認め、10種を新種、1種は中国新記録種であることを明らかにした。 9.ツツハナバチ属:リンゴ等花粉媒介に利用されるハキリバチ科ツツハナバチ属について、東アジア産の標本を調査し、1種について新同物異名を明らかにした。 10.トビコバチ画像データベース:有用資源昆虫である寄生性小蜂のひとつ、日本産トビコバチ科56属90種について、将来のネットワーク形成、広域利用を目的として、713の標本画像のデータベースを作成し光デイスクに蓄積、検索可能にした。
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