研究概要 |
1.アリ相のモニタリング.アリ相の全面的解明をめざす長期モニタリングは,個々の大木へのアクセスが予想以上に困難であったこと,調査人員の不足などで所期の目標は達成できなかった.しかし,高所の着生植物などから新記録種が30種以上発見され,ランビル国立公園全体で350種に達した. 2.アリ-同翅類-植物関係.シリアゲアリ属4種とアリ植物であるオオバギ属の関係を調べた.20種(135本)のオオバギのうち11種(60本)にアリとの種特異的関係がみられた.代表的オオバギ4種から合計40のアリコロニーを採集して,コロニー・サイズ,共生カイガラムシの個体数を調べた結果,植物体サイズの増加にともないアリ・カイガラムシ双方の生物量が増加した.オオバギの生息場所が明るいほどアリとの厳密な共生関係が見られた.同様なデータはマメ科植物と共生するCladomyrma属のアリについても膨大にえられた. 3.林床性アリ類の食性.大型林床徘徊性アリの代表種である,Diacamma intricatumの食性を,餌取上げ法で調べた.20時間の観察で約80の餌を確認し,本種が基本的に林床の小動物のハンターであることが判明した.樹上でも採餌する大型種Polyrhachis bihamataについても,同様の観察を19時間おこなった.この他,15種のアリについて,餌の選好性の予備調査として,蜂蜜・粉チーズ・新鮮な昆虫を与える実験を合計26回おこない,多くの新知見をえた. 4.アリの種の同定とレファレンス・コレクションの充実.これまでにボルネオ島全体から600種以上のアリを収集し,そのうち約25%を種の段階で同定できた.サラワク林野庁や兵庫県人と自然の博物館などに,従来の規模をはるかに超える大型コレクションが構築されつつある.
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