研究課題
平成8年度は、新井、赤井および研究協力者の石鍋は平成8年9月3日から10月11日まで、また上田および研究協力者の滝沢は平成8年10月1日から10月11日まで、研究協力者の松井は平成8年9月3日から9月25日まで訪中し、山東省済南市、遼寧省遼陽市、湖北省武漢市、上海市、浙江省金華市で、それぞれタナゴ類の採集を行い、形態学的研究、核型およびDNA実験の一部をおこなった。また、天津市の自然史博物館および武漢市の中国科学院水生生物研究所で中国各地のタナゴ類の保存標本を観察した。今年度の主な成果を以下に示す。1.昨年、浙江省で採集され、形態的特徴からRhodeus atremiusと同定された標本の染色体がn=23であることが判明した。n=23のタナゴ類は中国では初記録であり、核型からも、従来、九州特産とみなされていたカゼトゲタナゴが中国にも分布することが支持された。2.n=23と考えられるタナゴ類が山東省、遼寧省、湖北省でも採集された。3.Rhodeus lightiおよびTanakia himantegusの核型が詳しく調べられた。4.中国固有のRhodeus lightiおよび朝鮮半島固有のR.uyekiiが中国産のR.sinesisと同一種であり、命名の古さから、R.sinensisが本種の有効名であることが判明した.4.中国産のAcheilognathus tabiro(=A.tobira)を日本産のA.tabiraと比較研究した結果、中国産のA.tabiroは未記載種であることが判明した。5.中国で初めて秋に産卵するタナゴ類が発見された。6.中国産9種、亜種、日本産15種・亜種、朝鮮半島産1種、ヨーロッパ産1種の成魚の頭部の比較解剖を行い、頭部感覚管で9分析形質、眼下骨で6分折形質を識別することができた。種によっては、成魚が幼魚の特徴を維持していることから、幼形成熱と種分化の関係が示唆された。7.頭部感覚管について、日本産より特殊化の進んだ種が中国産にみられた。
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