研究課題/領域番号 |
07041158
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
佐藤 徳光 新潟大学, 医学部, 助教授 (00111716)
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研究分担者 |
伊藤 勇夫 千葉大学, 医学部, 助教授 (10012030)
浦野 徹 熊本大学, 医学部, 助教授 (90101899)
大和田 一雄 山形大学, 医学部, 助教授 (60101010)
八木沢 誠 弘前大学, 医学部, 助教授 (70003556)
三浦 豊彦 群馬大学, 医学部, 助教授 (90060508)
松林 清明 京都大学, 霊長研, 助教授 (50027497)
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研究期間 (年度) |
1995
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キーワード | 実験動物飼育設備 / 実験動物飼育器材 / ケージサイズ / 実験動物の適正管理 |
研究概要 |
まず、科研・総合(A)による成果すなわち我々の求めたケージ規格英訳し、欧米諸国のガイドライン策定責任者と共同研究に入った。米国ではILAR(Institute of Laboratory animal Resorces)が策定したガイドがNIHで採用されており、それの改定作業中であった。ILARの責任者Dr.T.Wolfleの意見では、ケージサイズの日本案(4BSサイズ)は米国基準とも良く合っているという評価を得た。ただ、近年は実験動物の心理学的・生態学的側面が重視され、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモットなどは集団飼育が主体になってきていること、さらに実験動物に玩具や隠れ家を与えるなどの生活環境整備が求められてきていることが強調された。この点はカナダでも同様であり、CCAC (Canadian Council on Animal Care)の責任者Dr.J.Wongの意見も米国の動向を意識しつつも独自の道を模索している姿勢が感じられた。特に、モルモットは集団飼育が義務化しており、ウサギのケージにつては我々のサイズはこれでも狭いとの指摘を受けた。米国では実験動物のユーザー側の代表として、CORNING-Hazlton研究所を視察した。動物取扱いガイドと企業としての経済効率を両立させるため、色々な工夫をこらして努力している一面を見せられた。例えば、サルは小型種を使用してケージの大きさをミニマムレベルに抑え、ケージの正面には小さな鏡を下げて心理効果を加味していた。サルはこの鏡を使って隣にいる仲間のサルを写しその存在で安心するのだという。 ヨーロッパ共同体では連合体として共通のガイドラインが存在するが、さらに各国とも国内法があって実験動物取扱いが規制されている。そのため、国によってかなり差が生じている。例えば、ドイツでは地方ごとの獣医局が各研究所の査察を行い厳しい規制を行っており、ガイドに合わない実験はできないこと、例えば、サルは集団飼育で日光浴を義務化されたため室内での実験は不可能とのことであった。フランスは国民性を反映しドイツの様な厳しさは無かった。イギリスは動物実験への規制が最も厳しく、また、最も古くから法律ができている国である。動物実験反対運動も最も厳しい国でもある。イヌ、ネコ、などのペット類はまず実験には使用できないし、動物実験そのものが国による資格検査と許可制の下で行われている。動物実験規制が厳しいだけに、今度は動物実験反対運動から動物実験を守る組織RDS (Research Defence Society)が結成され約100年の活動の歴史がある。そこの責任者Dr.M.Matfieldは、法律で動物福祉を行うのではなく、法律が無くとも自然に行えるのが最も良いと指摘していたが、実際はなかなか難しく、UFAWなどが実験動物取扱い基準を示し自己規制している。イギリスは実験にペット動物を使用しない点でアメリカとは一線を画している国である。恐らく、日本でイヌを用いた研究論文はイギリスのJournalには掲載できないであろう。 以上の国際学術研究を通じ欧米諸国の動向が把握できたこと、日本でも動物福祉への取り組みが始った事実を印象づけたこと、日本国内関係者の啓蒙と意識向上に大変役立ったことなどは大きな成果であった。国内では官民を問わず強い関心を受けたが、これも予想をはるかに越えるものがあった。そのため、途中経過の規格値の公表は混乱を招く恐れがあり、研究発表は意識的に避けてきた。今回の国際学術研究を最後に一応の結論を得たので、当報告の内容を、先ず、当問題の出発点であった国立大学動物実験施設協議会総会(平成8年5月、於筑波大)に報告し、また、第43回日本実験動物学会総会(平成8年6月、於新潟、会長 佐藤徳光)で関係者に広く提示する予定である。
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