研究課題
タイにおけるマラリアの疫学調査は、ミャンマー国境のタイ北部のマエホンソン、タイ中部のサンカブリ、タイ南部のラノンに於て実施した。現地共同研究者の協力を得て、平成7年9月より平成8年1月までの5ケ月間の間に、合計180名のマラリア陽性標本が得られた。現地検査者のギ-ムザ厚層染色法による診断では、全て熱帯熱マラリアか三日熱マラリアの単独感染と診断されていた。しかし、アクリジンオレンジ(AO)染色法による診断では多数の四日熱マラリアの感染が認められ、卵形マラリアも合計5例見いだされた。この診断結果はマイクロプレート法および新たに考案したネスティドPCR法を用いた遺伝子診断法により再確認された。四日熱マラリアは、マエホンソンでは19名、サンカブリでは6名、ラノンでは13名から検出され、検出率は20%に昇った。タイでは、四日熱マラリアは通常1%以下とされており、また卵形マラリアは20年間でわずか3例しか報告されていないことから、本研究結果は、タイにおけるマラリア種の分布状況を大きく覆すものである。また、熱帯熱マラリアの数例はPCR法で陰性となり新型の変異株と予測されたが、遺伝子配列を検討した結果、ターゲット部分の一塩基が従来型と異った新型の変異株と判明した。インドネシアでのマラリアの疫学調査は、フローレス島の2村の住民、および省立病院の外来発熱患者を用いて実施した。タイと同様、AO法による診断とマイクロプレート法およびネスチドPCR法を用いた遺伝子診断法による診断結果を比較検討した。その結果、役500名から71名のマラリア陽性者が検出され、ネスティドPCR法により6例の四日熱マラリアが確認された。また、タイで見いだされた熱帯熱マラリアの新型変移株は 例に検出され、この新型変異株は東南アジアに広く分布しているものと考えられた。
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