ロタウイルスの生態と進化に関する研究

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07041164
• 研究機関: 札幌医科大学
• 研究代表者: 浦澤 正三 札幌医科大学, 医学部, 教授 (00045379)
• 研究分担者: WU Huixia 中華人民共和国同済医科大学, 助教授 ; MUZAHED U. バングラデシュ国立農科大学, 獣医学部, 教授 ; CELIA C. Ca フィリピン国立ウイルス研究所, 上級特別研究員 ; YAOWAPA Pong タイ国立衛生研究所(NIH), 室長 ; 小林 宣道 札幌医科大学, 医学部, 講師 (80186759) ; 浦澤 价子 札幌医科大学, 保健医療学部, 教授 (90045378) ; 谷口 孝喜 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (40094213)
• キーワード: ヒトロタウイルス / 動物ロタウイルス / ウイルス遺伝子 / VP7遺伝子 / 遺伝子塩基配列 / ウイルス進化

研究概要

日本研究者と現地研究者が共同で検体中ロタウイルスの検出と陽性検体のG血清型別等を実施し以下の結果を得た。
1.中国同済医科大学-平成6年〜7年に武漢市内2病院にて約1400検体の下痢症患児便を採取。平成6年には63%、平成7年度は41%と高頻度にA群ロタウイルスを検出した。平成6年は75%がshort RNAパターンで、亜群I-血清型G2ウイルス優位、平成7年には99%がlong RNAパターンで、殆どが亜群II-血清型G1ウイルスであった。RNAパターンと抗原性の組合せが通常のヒトウイルスと異なる検体について特定の遺伝子分節の塩基配列を決定した。平成8年も引き続き患児便1200検体を採取し、ロタウイルスの検出と血清型の同定を行っている。
2.フィリピン国熱帯医学研究所-平成7年〜8年にモンテンルパ市4医療機関にて下痢症患児便検体510採取。うち陽性検体はA群ロタウイルス96(18.8%)、C群ロタウイルス1、ピコビルナウイルス1。A群ウイルスの大部分がlong RNAパターンで、その殆どが亜群II-血清型G1であった。平成8年〜9年も引き続き検体採取を行っている。
3.タイ国立保健研究所-本研究に基づく動物検体の収集開始が遅れたため、既に採取保存されていたブタ検体約560検体を使用。陽性例はA群ウイルス23、B群ウイルス1、C群ウイルス2例。A群23例の過半14(61%)は血清型G10でブタでは初めての発見であった。本ウイルスについてVP7、VP4遺伝子の塩基配列を決定した。加えて、平成7〜8年にはバンコク市内病院にてヒト下痢症患児の検体採取を行い、ロタウイルスの検出を試みている。
4.バングラデシュ農科大学-ブタ(470)、ウシ(120)、ヒト(560)下痢症検体についてロタウイルスの検索を行い、ブタ2例、ウシ1例、ヒト53例(9.4%)の陽性例を検出。ヒトウイルスでは血清型G1、G2が主体であり、現在その詳細を検討中。

研究成果

• [文献書誌] Koki Taniguchi: "Nondefective rotavirus mutants with an NSP1 gene which has a deletion of 500 nucleotides, including a cysteine-rich zinc finger motif-encoding region (nucleotides 156 to 248), or which has a nonsense codon at nucleotides 153 to 155." J. Virol.70. 4125-4130 (1996)
• [文献書誌] Kazunobu Kojima: "Species-specific and interspecies relatedness of NSP1 sequences in human, porcine, bovine, feline, and equine rotavirus strains." Arch. Virol.141. 1-2 (1996)
• [文献書誌] Hiroshi Ishizaki: "The distribution of G and P types within isolates of bovine rotavirus in Japan." Vet. Microbiol.48. 367-372 (1996)
• [文献書誌] Yaowapa Pongsuwanna: "Serological and genomic characterization of porcine rotaviruses in Thailand : Detection of a G10 porcine rotavirus" J. Clin. Microbiol.34. 1050-1057 (1996)
• [文献書誌] Akihisa Fukushima: "Effect of MDP-Lys (L18) as a mucosal immunoadjuvant on protection of mucosal infections by Sendai virus and rotavirus." Vaccine. 14. 485-491 (1996)
• [文献書誌] Kazunobu Kojima: "Sequence analysis of normal and rearranged NSP5 genes from human rotavirus strains isolated in nature : implications for the occurrence of the rearrangement at the step of plus strand synthesis." Virology. 224. 446-452 (1996)
• [文献書誌] Shuji Nakata: "Outbreaks of nosocomial rotavirus gastroenteritis in a paediatric ward." Eur. J. Pediatr.155. 954-958 (1996)
• [文献書誌] 谷口孝喜: "KEY WORD 1997-'98 感染症 : 分子疫学" 先端医学社, 160-161 (1996)