研究課題/領域番号 |
07041168
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
奥山 徹 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (40087789)
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研究分担者 |
ABODELNASSER バダウィ シン Al Azhar University, Pharmacy, Lecture
TAHA Khalifa Al Azhar University, Pharmacy, Professor
伏谷 眞二 東北大学, 薬学部, 助教授 (80108563)
西野 輔翼 京都府立医科大学, 医学部, 教授 (10079709)
ABD EL NASSER Badawi.Shi Al Azhar University, Pharmacy, Lecture
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研究期間 (年度) |
1995 – 1996
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キーワード | 成人病 / 化学発がん予防 / 疫学調査 / 食料品 / Nigella sativa / Daucus carota / Peucedanum japonicum / 発がんプロモーター抑制作用 |
研究概要 |
日本人の成人病の中では、悪性腫瘍(特に肺がん、消化器がん)・高血圧・心筋梗塞・脳卒中、糖尿病が特に大きな社会問題となっている。一方エジプトでは、肝臓がんと胃潰瘍が非常に多い。この両国間の成人病発生の違いを把握すると共に、その予防に身近かな食材あるいは伝承薬(生薬)を利用することを目的として、奥山・明治薬科大学教授、西野・京都府立医科大学教授と伏谷・東北大学助教授は、エジプトAl Azhar UniversityのProf.Taha KhalifaとDr.Nasser Singabの協力のもとに本研究に着手した。 ナイル川流域としてカイロ・アスワン・ルクソ-ル・デルタ地帯のタンタ・スエズ近郊、砂漠地帯としてのシナイ半島で、これら地域に特有なセリ科・マメ科・ユリ科・地衣植物等の薬用植物の採集を行なった。更に、農家で栽培している野菜・果物、また市場品伝承薬物・香辛料等の調査を行なうと共に、数多くの研究材料を入手した。 近年エジプトでは、《BLACK SEED OIL》あるいは《EGYPTIAN BLACK CUMIN SEED》名の商品が、糖尿病・潰瘍・がん等に有効であるとして、爆発的な人気で利用されている。これはキンポウゲ科のNigella sativaの種子およびその油脂であることが判明したので、この植物の地下部(根茎・根)並びに地上部(葉・茎・花・種子)のベストな採集・収穫時期を決め、より含量が高く、品種の良い試料を入手すべく各季節ごとに採集し、特定成分の変動と生物活性を調べている。更に、入手したエジプト産各種CarrotやPituranthos tortuosus(セリ科)、数多くの伝統薬物や香辛料について、その化学成分の解明と生物活性試験を行っている。 同時にスイスではハ-ブや生薬エキスが病気の治療に広く使われていることに注目し、Apotheke(薬局)で数多くの生薬を入手し、これらがスイス・ドイツでどのような形で国民の健康に寄与しているかを、がん、血栓症、糖尿病などの成人病に対する作用を調べることによって明らかにするとともに、疫学的調査・研究を併せて行なっていく予定である。 日本国内では、カイロとほぼ同緯度に当たる屋久島・種子島・長寿県であり数多くの食材を有している沖縄諸島、及び鳥取の砂丘地帯・隠岐で、以下の薬用植物・海藻、野菜・果物等の収集、伝承薬物の入手を行ない、エジプトのそれらと比較検討を行なっている。 屋久島・種子島--サルトリイバラ属各種、ヒハツモドキ地上部・果実、ボタンボウフウ、ハマボウフウ、ハマウド(浜独活)、ハマニガナ、サツマイモ類、地衣植物、シダ植物、その他多種。 鳥取砂丘・隠岐諸島--タラノキ、シオデ、ケヤマウコギ(オニウコギ)、サルトリイバラ数種、シシウド、ノダケ、アカショウマ、サラシナショウマ、オミナエシ、ミクリ、ウンラン、ハマゴウ、ネナシカズラ、ハマニガナ、ヤエムグラ,ウンラン、クルマバザクロソウ、海藻類、その他多種。 沖縄地方--海藻(カ-ナ、ス-ナ、オゴ-、アオノリなど)、クミスクチン(シソ科、野菜・健康茶として利用)、ヒハツモドキ、ボタンボウフウ「長命草」、アダン、ヤマクニブ-(未同定品,独特な芳香を有し虫よけとして利用)、ベニイモ、シマラッキョウ、各種果物、その他多種。 入手した各種試料のエキスについて、各種培養細胞を用いたスクリーニング試験を行ない、活性が認められたものについては更に分画・精製を繰り返して活性物質を単離した。活性物については、糖尿病合併症予防、血栓症予防、発がんプロモーター抑制作用を指標にした肺・皮膚・大腸発がん二段階実験、あるいは骨髄細胞に対する増殖効果に関する研究を行ない、数多くの興味ある知見を得た。エジプト産Carrot並びに数種のセリ科植物から、フェノール性化合物を単離・構造研究を行い、これらの化合物が発がんプロモーター抑制作用、血小板凝集・血液凝固抑制利用を示すことを確認し、その成果の一部を公表した。 エジプト国内では、疫学調査に関する報告・研究資料が非常に不足しており、また地域によっては、政治的・軍事的緊張が続いている場所も多かったことから、エジプト市場品の香辛料や伝統薬物の正しい使われ方と、それらがどのように国民の健康に寄与しているのか十分に把握できない点もあり、必ずしも満足がいける調査結果ではなかった。しかし、エジプト側からは今後益々の共同研究の必要性が訴えられており、私共もより一層協力関係を強め、より良い成果を上げられるように努力する必要があると感じている。
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