研究分担者 |
古謝 静男 琉球大学, 医学部, 講師 (60161923)
田川 進一 大阪市立大学, 医学部, 助教授 (70171569)
冨田 裕彦 大阪大学, 医学部, 助手 (60263266)
菅野 祐幸 大阪大学, 医学部, 助手 (40252663)
大澤 政彦 大阪大学, 医学部, 助手 (80213685)
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研究概要 |
1、はじめに 臨床的に進行性鼻壊疽(lethal midline granuloma:LMG)の病像を示す鼻腔リンパ腫(NL)は増殖細胞がT細胞に対する単クローン抗体に陽性反応を示すことから鼻腔T細胞リンパ腫(NTL)と呼ばれている。又、その組織像が多彩なことから、polymorpnic reticulosisCPR)とも呼ばれてきた。私共のこれまでの調査によるとNTLは日本、中国、韓国などの東アジア地区に多く発生しており、英国の約2倍以上の頻度である(Int J Cancer1989,1992)。本邦では沖縄の頻度は本州の約3倍である(Jpn J Cancer Res1994)。各地区におけるNTLの外来患者100,000人当たりの頻度は沖縄を除く本邦8・0,沖縄27・4,韓国(ソウル)40・8,中国(上海)9・8である。最近、NTLの発生とEpstein-Barr virus(EBV)の関連が注目されるようになったが、本年度の研究ではNTLの発生頻度とEBV陽性率の関連について比較検討した。 2、調査地域と対象 沖縄地区は琉球大学耳鼻科受診患者(1973-94)、大阪地区は阪大病院および関連病院受診患者(1969-93)を対象とし、病理学的に悪性リンパ腫あるいは類縁疾患と診断されている。病理診断のなされたパラフィンブロックについて、免疫組織化学により、増殖細胞の免疫学的性状を決定した。パラフィンブロックよりDNAを抽出し、EBVゲノムの存在をPCR法によって調べ、陽性所見を得たものに対しては、in situ hybridi zentioh(ISH)法を用いて、EBVの局在を調べ、シグナルが増殖細胞に認められるものを陽性と判定した。尚、コントロールとして、健常人におけるEBV陽性率を沖縄70名、大阪86名について、咽頭うがい液を用いて調べた。 3、結果 咽頭うがい液でのEBV陽性率は大阪地区52%、沖縄地区53%と差はなかった。鼻腔リンパ腫全体のEBV陽性率は大阪52%、沖縄53%であり、B細胞性での陽性率は各々40%、43%、T細胞性では80%、100%であった。このようにEBV陽性率における地域差はないが、免疫学的性状(B or T 細胞性)によって違っていた。 4、考察 鼻腔T細胞リンパ腫とEBVの関連が多大の関心を集めている。此度の検討から、これを支持する結果を得た。一方、EBV陽性率はNLの頻度の差に関係なく一定であったことから、リンパ腫発症へのEBV以外の要因の関与も強く示唆している。この点を明らかにするため、現在、進めている研究は(1)EBV感染細胞において、潜伏感染遺伝子(EBNA2、LMP-1)が発現すると正常の免疫能を有する患者ではcytotoxic T lymphocyte(CTL)によって感染細胞は排除される。major histo compatibility complexのうちEBVの排除に関与していることが知られているHLA classlのA2について調べる目的で鼻腔T細胞リンパ腫患者の末梢血を収集して解析しつつある、(2)鼻腔T細胞リンパ腫は減少しつつあるという印象を耳鼻科医はもっている。この点を明らかにする目的で韓国、日本での本患者の頻度の推移を調べる。preliminaryなデータであるが、韓国の延世大学では最近の5年間の頻度は以前の1/2になっているようであり、この点は現在、精査中である。各地区の鼻腔リンパ腫の年代別のEBV陽性率を検討しなければならないが本疾患発生における環境要因(life stylei)の重要性を示唆しているように思われる。
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