研究課題
絨毛癌の約半数は胞状奇胎に続発する。胞状奇胎は雄核発生を原因とし発生する異常妊娠であるため、対立遺伝子間でのホモ接合の形成及び父親由来ゲノムノ選択的継承を遺伝的特徴とする。このため胞状奇胎に続発する絨毛癌も同様の特徴を示すことになり、癌化の分子機構を解明するためのLHO解析等が行い得ない。我々は、絨毛癌細胞の造腫瘍性の抑制に関わるヒト染色体の同定を試みた。絨毛癌細胞へ微小核融合法に基づきヒト正常細胞由来染色体を単一移入し、表現型の変化を解析することにより行った。その結果、7番染色体を単一移入した場合にのみ腫瘍細胞形態、細胞増殖特性及びヌードマウスでの造腫瘍性の顕著な抑制を観察した。以上の結果からヒト7番染色体上に絨毛癌抑制遺伝子が存在することが推定されたため、ヒト7番染色体上の共通欠失領域の同定を行った。絨毛癌サンプルDNAを6%ポリアクリラミドゲルで泳動した結果、7番染色体上の各領域で高頻度に両側アリルの欠失が観察された。両側アリルの欠失は複数のプライマーを用いたMultiplex PCRにより確認した。7番染色体上の少なくとも1領域に14例中10例(71%)の絨毛癌が両側アリルの欠失を示した。このため8例の絨毛癌細胞株について、同様の観察を行った結果、全ての細胞が7番染色体上のいずれかの領域で両側アリルを欠失していた。以上の結果から22例の絨毛癌のうち、18例が7番染色体上のいずれかの領域に両側アリルの欠失を示すことが判明したため欠失地図を作成し、絨毛癌における共通欠失領域の同定を試みた。その結果、D7S520とD7S663内の領域に共通欠失領域が存在し、D7S502及びD7s480遺伝子座で最も欠失の頻度が高いことが判明した。
すべて その他
すべて 文献書誌 (5件)