研究概要 |
南米・カリブ海諸国でのHTLV-I/II感染の民族背景と疾患感受性に関する研究班(園田班は)は、他の国際学術研究班(速水班、田島班、納班)と協力して、アンデス高地先住民(ペル-、コロンビア、ボリビア、チリ、アルゼンチン)、オリノコ・アマゾン平地先住民(ベネズエラ、コロンビア)、南米大陸最南端のパタゴニア先住民(チリ)ならびにアフリカ系黒人集団(ジャマイカ、コロンビア、ブラジル、マイアミ)におけるHTLV-I/II感染の民族分布と疾患感受性の民族的遺伝要因を、ウイルス学、免疫血清学、HLA遺伝学の分析方法をもちいて解析した。ここでは、現地国の共同研究者の協力をえてインフォームドコンセントのもとに疫学情報と血液検体を収集し、HTLV-I/II抗体保有状況、HTLV-I/IIウイルスの亜型分析、HLAと免疫応答の多型分析をおこなった。HTLV-I関連疾患ではHTLV-I-associated myelopathy(HAM/TSP),の患者がアンデス高地先住民のなかに多数発見された。HTLV-I/IIキャリアの民族分布の調査では、アンデス高地先住民にHTLV-Iキャリアが新たに発見された。HTLV-I/II関連疾患の遺伝要因に関する研究では、アンデス先住民の患者とHTLV-IキャリアのHLAアレルとハプロタイプが南九州日本人のそれらと比較され、それぞれの民族に固有のHLAタイプ(ethono-specific HLA)と普遍的なもの(pan-ethnic HLA)が同定された。ATLとHAM/TSPのCD8+CTLとCD4^+T cellsが認識するHTLV-Iエピトープをそれを拘束するHLAクラスI、IIアレルを同定した。さらにHLAクラスIアレルのなかでATLとHAM/TSPに好発するHLA-A26^*,B^*4002/6とHLA-A24,B^*07のアンカーモチーフとHTLV-I Tax,EnvのCD8+CTLエピトープを分析したところ、ATLに関連するHLAアレル(HLA-A26^*,B^*4002/6)はHTLV-IのTaxペプチドとアンカーモチーフをもたず、抗TaxCD8+CTLを誘発できないことが明らかになった。ここに、抗TaxCD+CTLの免疫不全を規定するHLAアレルとATLの発症リスクとの関連がつよく示唆された。当研究班が収集された血液検体はすべて血清とリンパ球にわけられ、前者は-20゚C以下で、後者は生細胞のまま液体窒素下(-196゚C)で凍結保存されている。これらの検体は用時解凍され、HLAタイピング、免疫応答検査、HTLV-I/IIの亜型分析に供される体制を構築した。
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