研究課題
1.中国医科大学病院での喉頭癌102症例(男性73例、女性29例)のパラフィン包埋組織標本を用いてHPV DNAの検索および癌抑制遺伝子産物P53の検索を行った。組織切片よりDNAを抽出し、HPV-6、11およびHPV16、18、31、33、52bの各E6、E7領域をpu-31B、pu-2R、およびpu-1M、pu-2Rのプライマー対を用いてPCRを行った。PCR産物は電気泳動後、Southern blot hybridizationを行い、HPV DNAを検出した。また、PCR産物のバンドサイズおよびPCR産物の各種制限酵素切断パターン型別検索を行った。その結果、1)HPV陽性例は、102例中60例(58.8%)、その型別では、悪性型の16、18、33型が33例(55.0%)、良性型6、11型7例(11.7%)、6型と16型あるいは18型との混合例が20例(33.3%)であった。合併例は女性に多く、癌の進展例に多くみられた。2)HPV検出と性別、病変部位別、組織分化度別、リンパ節転移別との間では有意差を認めなかった。一方、P53の検出には単クローン抗体を用いて、ABC法により核内染色を行い検討した。その結果、1)P53は102例中60例(58.8%)に陽性であったが、HPV感染との間には有意な相関は認められなかった。2)性別、病変部位別、組織分化度別では相関はみられないが、頸部リンパ節転移との間で有意な相関が認められた(P<0.005)。2.鹿児島大学医学部耳鼻咽喉科および病理学教室での喉頭癌24例、下咽頭癌27例の試料を用いて、糖鎖抗原(Tn、STn、T)およびムチンコア蛋白抗原(MUC1、MUC2)発現を検索した。その結果、1)乳腺型アポムチン関連抗原(DF3)は異型成扁平上皮49例中20例(41%)と扁平上皮癌51例中31例(61%)で、細胞膜のみならず細胞質内に発現がみられ、癌で細胞質内発現が顕著であった。2)T抗原は、異型成扁平上皮で59%、癌で76%の発現がみられ、悪性化で増加する傾向がみられた。
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