研究課題
本研究班では、多発する肺癌の原因を、疫学・病理学・分子生物学・栄養学・生化学の様々な角度から究明するため、以下の三つのアプローチに基づいて研究を進めている。第一のアプローチは、チェンマイ大学医学部病院における手術および生検材料を用いた病理学的検討と肺組織から抽出したDNAによる分子生物学的検討である。肺癌組織型判定の基準の合意、DNA抽出のプロトコールなどの準備は終了し、現在病理およびDNA検体を蓄積している。二番目のアプローチは、チェンマイ大学病院における患者対照研究である。生活習慣・生活環境に関する質問票の作成、面接担当者の訓練を終了し、平成7年11月から面接調査を開始した。三番目のアプローチは女性肺癌の高率および低率地域における女性一般地域住民の調査である。この調査は患者対照研究では導入できない生体マーカー、居住環境の直接調査、食餌の分析を目的としたものである。調査内容は、(1)患者対照研究の質問票による面接調査、(2)末梢血の血清学的検討・DNA抽出、(3)尿中の変異原物質の抽出、(4)食餌サンプルの収集と分析、(5)居住家屋内の浮遊細菌の解析、(6)喀痰中の細菌の解析、である。平成7年度は女性肺癌が最も高率なサラピー地区で、女性一般住民57名を調査した。血清成分の定量分析は完了し、現在面接調査データとの関連と検討している。その結果に基づき収集した食餌サンプルの分析を行う予定である。尿中の変異原物質の抽出は終了し、平成8年度のサンプルと併せて変異原性試験を行う。(5)と(6)は肺癌高率地域で良性の肺疾患がきわめて多いことから、肺癌発症との関連を検討するために実施したもので、現在菌の同定と定量を進めている。平成7年度に、三つのアプローチをすべて順調に開始することができた。今後、各種サンプルの分析を進める一方、病理・DNA検体、患者対照調査データの蓄積を行う。
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